稼働率16.3%という数字を、そのまま「詰み」に使えなかった話

全国平均の稼働率・料金相場を実データのまま組んだら、堅実な経営はおろか
かなり強気な経営でも黒字が積み上がり続けた。経営シムとしての「詰み」が生まれない。

キャンプ場経営ゲームをつくる第1回 / 全1回目次

「キャンプ場経営ゲーム」は、これまでの8作と違って複数シーズンにわたる経営シムにした。資金が尽きたら倒産、というシリアスな結末を用意することで、意思決定に緊張感を持たせたかった。

実データをそのまま組んだら、誰も倒産しなかった

全国平均稼働率16.3%、サイト料金の相場(ソロ・デュオ2,000〜3,000円、ファミリー4,000〜5,000円、グループ7,000〜9,000円)をそのままエンジンに組み込み、価格を最大まで吊り上げ、毎シーズン設備投資をしてスタッフも手厚くする「強気すぎる経営」を8シーズン流してテストした。

turn=1 season=springGw occ=0.214 rev=5,655,100円 cost=3,400,000円 cash=2,755,100円\nturn=2 season=summer   occ=0.236 rev=6,248,886円 cost=4,100,000円 cash=4,903,986円\n(中略。8シーズン通して黒字が積み上がり続けた)

初期資金50万円というかなり厳しい設定にしてもこの調子だった。経営シムとして「判断を誤ると詰む」という緊張感が、まったく生まれていなかった。

60区画×90日という規模感が、コストに対して大きすぎた

原因を辿ると、区画数(設計値:総区画60)×営業日数(設計値:1シーズン90日)という規模のかけ算が大きく、稼働率が20%程度でも売上が数百万円規模になっていた。これ自体は現実離れした数字ではないのだが、対する固定費・人件費の設計値がそれに見合っていなかった。

価格弾力性を上げただけでは解決しなかった

最初は「価格を上げても稼働率が落ちるだけで、収入自体はあまり変わらない」という設計(価格弾力性1.0)にしていた。これは経済学的には「収入一定」という有名な性質そのものだが、ゲームとしては「強気な値上げのリスク」が伝わらない。弾力性を2.2まで引き上げて「値上げしすぎると収入が減りうる」効きに変えたが、それでも黒字基調は崩れなかった。価格弾力性は「強気な値上げの効き方」を決めるだけで、収支全体のスケール感は決めていなかった。

結局、コスト構造そのものを引き上げた

固定費(光熱・維持費の設計値)を50万円/シーズンから220万円へ、スタッフ配置の人件費を最大170万円から340万円へ、集客施策の費用も引き上げた。その結果、堅実な経営はぎりぎり黒字を維持しつつ、初期資金が少なく強気な支出を続けるケースは1シーズン目で資金がマイナスに転落するようになった。

(コスト調整後)\n堅実な経営:8シーズン完走、経営スコアCランク\n強気すぎる経営:1シーズン目で cash=-944,900円 → 倒産

実データ(稼働率・料金相場)は動かさず、一次情報の無いコスト構造だけをバランス調整の対象にした、という形になる。README・`_docs/データ更新チェックリスト.md`にも、このコスト構造がゲームバランス上の設計値であり特定の統計値ではないことを明記した。

「市長になってみよう!」の複数年進行の設計(`composeBudgetYear`を1年ずつ呼ぶだけのシンプルな構造)をそのまま転用できたのは助かった一方、数値のバランス調整は結局、実際にシミュレーションを走らせて手で追い込むしかなかった。経営シムを作るというのは、計算式を書くことよりこのバランス調整の方が時間がかかるのだと実感した回だった。

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