契約不適合責任とは|請負の受託開発で、納品後に直す義務と、1年以内の通知を条文で整理する
納品したものが契約の内容と違っていたとき、作った側が負う責任が契約不適合責任。
請負では、違いに気づいてから1年以内に通知しないと、直してもらう権利などを失う。
契約不適合責任は、納品したものが契約の内容と違っていたときに、作った側が負う責任のことだ。
請負の受託開発で大事なのは、注文する側が違いに気づいてから1年以内に知らせないと、直してもらう権利などを失う、という決まりだ。
この記事では、民法の条文を実際に読んで、納品後に何を直す義務があるのか、いつまでに何を言えばいいのかを整理する。
僕は法律の専門家ではなく、受託開発に関わる会社員として条文を読んだだけだ。
個別の案件で揉めたときは、契約書と弁護士の判断が先になる。
瑕疵担保責任から名前が変わった
2017年に成立した民法改正が、2020年4月1日から施行された。
法務省のパンフレットは、この改正で「売主が引き渡した目的物が種類や品質の点で契約内容と異なっていたり、数量が不足していた場合」のルールが見直された、と説明している。
昔の「瑕疵担保責任」にあたる部分で、今は「契約不適合」という言い方になっている。
同じパンフレットには、賃貸借や請負のように売買以外の有償契約でも、性質に反しない限り売買と同じルールが適用される、という注記がある。
条文でいうと、民法559条が売買の規定を売買以外の有償契約に準用している。
受託開発の請負契約にも、売買の規定が基本として当てはまる、ということだ。
納品後に注文者ができること
売買の条文(562条・563条)から、注文者が言えることを順に並べる。
請負にはこの考え方が準用される。
- 追完の請求(562条)… 引き渡されたものが種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しで直すよう求められる
- 報酬の減額(563条)… 相当の期間を定めて直すよう催告し、その期間内に直らなければ、不適合の程度に応じて減額を求められる
- 直すのが不可能な場合や、相手が直すのを拒んだ場合は、催告なしで減額を求められる(563条2項)
条文には損害賠償と契約の解除も出てくるが、この記事では追完と減額に絞る。
ソフトウェアでいえば、仕様どおりに動かない部分を直してもらう、直らなければ代金を減らしてもらう、という順番だ。
追完の方法は、注文者が選んだものに必ず決まるわけではない。
562条1項のただし書きで、相手に不相当な負担を課さないなら、請求された方法と違う方法で直してもよい、とされている。
たとえば作り直しを求められても、修正で足りるなら修正で済ませる、という余地がある。
請負だけの決まり:指図が原因なら言えない
請負には、売買にない制限が636条にある。
注文者が提供した材料の性質や、注文者が与えた指図が原因で生じた不適合は、それを理由に追完や減額などを求められない。
ただし、請負人がその材料や指図が不適当だと知りながら注文者に告げなかったときは、この限りでない。
受託開発に引き寄せると、お客さんが指定した仕様どおりに作って、その仕様自体が問題だった場合に当たる。
ここで効いてくるのが、「この指定だと困るかもしれません」と気づいた時点で伝えておくことだ。
条文のただし書きは、知りながら黙っていた側に責任を戻している。
気づいたことを記録に残して伝える習慣は、この条文から見ても理屈が通っていると僕は思う。
1年以内の通知(637条)
請負の期間の決まりが、637条1項だ。
注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないと、追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができなくなる。
数字の読み方は、2点だけ押さえておく。
- 起点は「納品した日」ではなく「不適合を知った時」
- 1年以内にするのは、請求そのものではなく「不適合がある」という通知
売買の566条にも同じ形の決まりがあり、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知することになっている。
請負の637条は、これと同じ考え方で書かれている。
例外が637条2項にある。
請負人が、仕事の目的物を引き渡した時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、1年の制限は適用されない。
知っていて渡したものを、1年たったから通知がないと言って逃げることはできない、という構造だ。
準委任なら話が変わる
受託開発の契約には、請負のほかに準委任がある。
準委任は656条で委任の規定を準用する契約で、受任者は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負う(644条)。
ここで求められているのは、仕事の完成ではなく、注意を払って事務を進めることだ。
だから、請負と準委任のどちらで契約したのかによって、納品後に問われるものが違ってくる。
契約書のタイトルに「業務委託」としか書いていなくても、中身が成果物の完成を約束しているのか、作業の遂行を約束しているのかを読む必要がある。
これは条文を並べて見えた、僕の整理だ。
納品前に契約書で確認する3点
ここからは条文の話ではなく、僕が契約書を読むときに見る場所だ。
- 請負か準委任か。成果物の完成を約束している書き方か、作業の遂行を約束している書き方か
- 不適合があった場合の対応が、条文のままか、契約書で期間や範囲が決めてあるか
- 「契約の内容」が書かれているか。仕様書や要件の資料が契約に紐づいているか
契約不適合は、「契約の内容に適合しない」ことが基準になる。
だから、何を約束したのかが曖昧だと、不適合かどうかの線も曖昧になる。
納品後の話は、結局その前の、何を作ると約束したかの書き方に戻ってくる。
関連して、納品と検収の話は検収とはに、保守の範囲の決め方は保守契約の「対応範囲」を先に決めるに書いた。
出典
- e-Gov法令検索:民法(明治二十九年法律第八十九号)(559条・562条・563条・566条・636条・637条・644条・656条を確認)
- 法務省パンフレット「2020年4月1日から 売買,消費貸借,定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります」
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