保守契約の「対応範囲」を先に決める|「ついでにこれも」が、見積もりにない仕事の入り口になる
「ついでに、このボタンの色も変えといてください」
軽い一言が、見積もりに入っていない仕事の始まりになることがある。
保守契約で、よくある場面がある。
お客さんからバグ修正の依頼が来る。
ログイン画面のボタンが押しにくい、という小さな不具合だ。
直して報告すると、返信の最後に一行だけ追記がある。
「ついでに、このボタンの色も少し明るくしてもらえますか」
五分もあれば終わる作業に見える。
断る理由もないので、そのまま直して納品する。
「ついでに」は、契約書のどこにも書いていない
困るのは、それが一回では終わらないことが多い点だ。
報告のたびに「ついでに」が一つずつ増えていく。
文言の修正、画像の差し替え、メニューの並び替え。
どれも単体では小さいが、積み上げると半日仕事になる。
保守契約書を読み返すと、「軽微な不具合の修正に対応する」とだけ書いてあることがある。
どこまでが軽微でどこからが仕様変更なのか、線引きがどこにもない。
お客さんが悪いわけではない。
作る側が決めていなかっただけだ。
金額の話より、線の話が先
この手の話は「追加費用をもらうかどうか」の問題として扱われやすい。
けれど順番は逆だと僕は思う。
先に決めるべきは金額ではなく、何が保守の範囲に入っていて、何が入っていないかという線のほうだ。
線が引けていれば、金額の話はそのあとに自然とついてくる。
見積もりに、対応範囲を数行だけ足す
やることは、見積書か契約書に短い一文を足すだけでいい。
たとえば「バグ修正・表示崩れの修正は保守範囲内。文言変更・デザイン変更・機能追加は都度お見積もり」。
たったこれだけの数行だ。
「ついでに」と言われたとき、その一文を指させばよくなる。
断っているのではなく、決まっている線をなぞっているだけになる。
角が立つのを心配するのは、こちらが線を持っていないときだけだと思う。
断ることは、不親切ではない
範囲がはっきりしているほうが、お客さん側も助かるはずだ。
どこまでが無料の範囲なのか分からないまま頼むより、線が見えているほうが、次に何を頼むか計画できる。
見積もりの「時間」を数え忘れる話は前に書いた。
今回は見積もりの「範囲」の話で、数え方と線の引き方は、似ているようで別の失敗だ。
「ついでに」を言われたら、それは相手の図々しさではなく、線を見せていないサインなのだと僕は思う。
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