三日あれば終わると言った仕事に、二週間かかった。見積もりで数え忘れていたもの

手を動かす時間だけを数えていた。
待つ時間も、直す時間も、渡すときの時間も、そこには入っていなかった。

受けたときは、三日で終わると思っていた。
画面が三つ、入力フォームがひとつ。
頭の中で手を動かす日数を数えて、三日ですと答えた。

実際に終わったのは、二週間後だった。

相手には謝れば済む話ではある。
きついのはそこではなくて、その二週間のぶんだけ後ろの予定が全部ずれていくことのほうだった。
受託を十五年やっていて、僕はいまだにこの外し方をする。

数えていたのは、手を動かす時間だけだった

あとから紙に書き出してみて分かったのは、見積もりのときに数えていたのが「自分が机に向かって作業している時間」だけだった、ということ。
実際にかかった二週間のうち、その時間はたしかに三日ぶんくらいしかなかった。
見積もりは間違っていなくて、数える対象を間違えていた。

残りの十一日が何に消えたのかを分けてみると、だいたい三つに落ち着いた。

ひとつ目、待っている時間

写真がまだ揃っていない。
文章の最終版がまだ来ない。
確認をお願いしたまま、返事が三日こない。

この間、僕の手は止まっている。
止まっているのに、納期のほうは普通に進む。
ここが厄介なところで、待ち時間は自分の努力ではまったく縮まらない。

しかも待っている側は、たいてい相手が悪いとは思わない。
相手にも本業があって、確認は本業の合間にやることだからだ。
三日かかるのが普通で、こちらが翌日に返ってくる前提で数えているほうが甘い。

ふたつ目、一度で決まらない時間

作ったものを見せて、そのまま通ることはまずない。
見てはじめて「思っていたのと違う」が出てくる。
これは相手のわがままではなくて、形になる前は誰も正確には想像できないからだと思う。

僕はここを長いあいだ「例外」として数えていなかった。
うまくいけば一発で通る、という前提で日数を出していた。
うまくいったことは、たぶん一度もない。

みっつ目、渡すときの時間

できあがったあとにやることが、必ず残っている。
スマホで見て崩れていないかを確かめる。
フォームから実際に送ってみて、メールが届くかを見る。
相手に使い方を説明する。
本番のサーバーに移して、移したあとにもう一度ひととおり触る。

作る作業のうちに入っていないので、見積もりからきれいに抜け落ちる。
抜け落ちるくせに、ここを飛ばすと事故が出る場所でもある。

いま僕がやっていること

ひとつは、手を動かす日数を出したら、そこに同じだけ足すこと。
三日と出たら六日で答える。
乱暴なやり方に見えるけれど、いまのところこれがいちばん当たっている。
上の三つを個別に見積もろうとすると、結局また甘くなるからだ。

もうひとつは、日数をひとつの数字で言わないこと。
「作業に六日」と「確認の返事を待つ日数」を分けて書いて、返事が遅れたぶんは後ろにずれます、と最初に伝えておく。
こう書いておくと、遅れたときに責任のなすりつけ合いにならない。

直しの回数も先に決めるようにした。
二回までは見積もりに入っていて、三回目からは別に相談させてください、と書く。
書いておくと相手も一回ぶんを大事に使ってくれるので、結果として回数が減る。

そして、早く終わった日は早く出す。
余裕を足した以上、余ったら返すのが筋だと思っている。
隠して抱えていると、次の見積もりで自分が信用されなくなる。

それでも外れる日はある

倍にしても外れるときは外れる。
そういうときにやってはいけないのは、黙って遅れることだと思う。
遅れそうだと分かった日にそう言えば、たいていの相手は待ってくれる。
納期の前日に言うと、待ってくれた人でも怒る。

見積もりは予言ではなくて、約束の形をした相談だと僕は考えている。
当てにいくものではなくて、外れたときにどう動くかまで含めて渡すもの。
そう思うようになってから、数字を出すのが少しだけ怖くなくなった。

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