キャンプマットのR値の目安|寝袋の数字を三つ見ても、背中だけが冷たかった
寝袋の保温は、体の下では潰れて効かない。
そこを受け持つ数字はマットのほうにあって、しかも重ねると足せる。
九月に入ってから、夜の冷え方が変わった。
先月までは暑くて眠れなかったのに、明け方に一度目が覚めるようになった。
それも、体全体が寒いのではない。
背中の、床に触れているところだけが冷たい。
寝袋は買い替えたばかりだった。
数字を三つ見て選ぶ、という話を前に書いたとおりにやって、快適使用温度のほうを基準にして選んだやつだ。
それでも背中が冷たい。
理由は、寝袋の側にはなかった。
寝袋は、体の下では仕事をしていない
寝袋があたたかいのは、中の綿や羽毛が空気を抱えこんでいるからだ。
空気の層が熱を逃がさない。
その層は、体重がかかると潰れる。
上に載っている部分はふくらんだままだけれど、体の下に敷かれた部分は薄い布に戻る。
つまり、背中側は寝袋の担当ではない。
そこを受け持つのはマットのほうだ。
これを知らないうちは、寒い夜が来るたびに寝袋を疑っていた。
疑う場所が最初から違っていた。
マットの断熱には、R値という数字がある
R値は、熱の伝わりにくさを表す数字だ。
大きいほど通しにくい。
おもしろいのは、この数字が世界共通の測り方に揃ったのが、そんなに昔ではないことだ。
ASTM F3340 という規格が承認されたのが2019年の秋で、NEMO のような主要メーカーが業界標準の策定に関わっている。
測り方が具体的で、読むとイメージしやすい。
摂氏20度の密閉した空間で、マットを二枚の金属板ではさむ。
上の板は人が寝ている状態を模して2kPaの圧力をかけ、体温に近い35度に保つ。
下の板はキャンプ地の地面を想定して5度に保つ。
上の板が35度を保ち続けるのに、どれだけのエネルギーが要るかを測る。
エネルギーがたくさん要るなら、熱が下へ逃げている。
少なくて済むなら、マットが止めている。
規格ができる前は、業界全体で標準化された測り方が存在しなかった。
各社が自分のやり方で出した数字が並んでいたので、メーカーをまたいで比べることができなかった。
だから、古い商品の「断熱性抜群」とか「冬でも快適」といった言葉は、いまの数字と並べても意味がない。
比べられるのは、F3340 で測ったと分かっている数字どうしだけだ。
目安は、四つに分かれている
どのくらいの数字が要るのか。
メーカーや販売店が出している目安を並べると、だいたい同じところに落ち着く。
R値1から2で夏。
2から4で春から秋までの三シーズン。
4から6で冬。
それ以上が高所や極地まで。
いまが九月の頭なので、僕がいる場所は三シーズンの、下のほうだ。
十月の後半から先は、4を目指すことになる。
ただし、この目安は目安でしかない。
同じ気温で快適に眠れるかどうかは人によってかなり違う、と各社がわざわざ書いている。
僕は寒がりなので、目安より一段上を見るようにしている。
いちばん役に立ったのは「足せる」ということ
R値の性質でいちばん実用的なのが、重ねると足せることだ。
NEMO が自社の製品で例を出している。
テンサートレイル(R2.8)とスイッチバック(R2.0)を重ねると、R値4.8のマットと同じくらいの断熱になる。
山と道の記事にも、R0.7のパッドを二枚重ねて1.4になる、という書き方が出てくる。
これを知ったとき、正直ほっとした。
冬用のマットを買い直さなくていい。
手持ちのマットの下に、安い銀マットを一枚敷く。
それだけで数字は上がる。
しかも銀マットは薄くて、丸めれば助手席の足元に入る。
いまの僕の車には、季節を問わずインフレーターマットが一枚敷いてある。
九月の半ばから、その下に銀マットを足す。
買い替えではなく、足す。
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車の床は、キャンプ場の地面より冷えることがある
地面の上にテントを張るのと、車の中で寝るのとでは、下側の条件が違う。
土は、日中に受けた熱をしばらく持っている。
夜になっても、地面のほうが空気よりあたたかい時間帯がある。
車の床は金属で、その下は空気だ。
風が下を抜けていくので、外気の温度がそのまま上がってくる。
床の傾きと段差を直したら朝まで眠れた、という話を前に書いたけれど、あのときは平らにすることしか考えていなかった。
平らにしたうえで、冷たさも切らないといけない。
寝てみると、車のほうが体感で一段寒いことがある。
数字の目安を車中泊にそのまま当てるときは、そこを少し足して考えている。
重ねる順番と、僕なりの決めごと
重ねる順番は、断熱を下、寝心地を上にしている。
薄くて冷たさを止めるものを床側へ、厚くてやわらかいものを体側へ。
逆にすると、せっかくのクッションが冷たい床に押しつけられる。
銀マットの銀の面をどちらへ向けるかは、正直よく分からない。
僕は体のほうへ向けているけれど、自分で測って比べたわけではないので、そこは決まりとして書かない。
もう一つ決めているのが、R値の書いていないマットの扱いだ。
「数字が書いていない=断熱がない」ではない。
ただ、比べる材料がないので、比較の話をするときは表に載せない。
安いマットが悪いという話でもなくて、実際いま僕が下に敷いているのは二、三千円の銀マットだ。
数字が要るのは、どれを買うか迷っているときだけだと思う。
九月の背中の冷たさは、銀マット一枚で消えた。
寝袋を買い替える前にこれを試していれば、去年の秋はもう少し楽だった。
出典
- NEMO Equipment Japan「NEMOのR値(ASTM F3340)への関わりとアプローチ」(規格の成立・測定方法・R値の加算)
- 山と道「スリーピングパッドのR値ランキングを見る」(ASTM F3340-18 の試験条件・季節別の目安)
※ 数値は2026年9月5日時点で各ページを確認したものです。快適に眠れる温度には個人差があります。