「0℃対応」の寝袋で、8℃の夜に寒くて目が覚めた。数字は三つあると知らなかった

八月末、標高のある場所で夜中の二時に寒さで目が覚めた。
寝袋には0℃対応と書いてあり、その晩の最低気温は8℃だった。
寝袋の温度表示には快適・下限・極限の三つがあって、僕が見ていたのは真ん中の数字だった。

八月の終わりに、標高のあるところで一泊した。

昼はまだ半袖で汗をかいていたのに、夜中の二時に寒さで目が覚めた。
使っていたのは「3シーズン用・0℃対応」と書かれた寝袋で、その晩の最低気温はスマホで見るかぎり8℃だった。
0℃まで大丈夫なはずの寝袋で、8℃の夜に眠れなかった。

壊れていたわけでも、安物だったわけでもない。
あの「0℃」がどこの数字なのかを、僕が知らなかっただけだった。

寝袋の温度表示は、ひとつではない

寝袋の温度には、国際的な試験の決まりがある。

ISO 23537という規格で、もとはヨーロッパのEN 13537というものだった。
ここで決められている数字は、ひとつではなく三つある。

快適温度(コンフォート)は、標準的な体格の女性が、体を丸めずにくつろいだ姿勢で眠れる下限。
下限温度(リミット)は、標準的な体格の男性が、体を丸めた姿勢で八時間眠れる下限。
極限温度(エクストリーム)は、標準的な体格の女性が六時間、低体温症で命に関わる状態にならずにいられる温度。

三つめは、眠れる温度ではない。
生き延びられる温度だ。
規格の説明にも、下限温度から極限温度のあいだは強い寒さを感じ、健康を害する危険があると書いてある。

箱に大きく出ているのは、たいてい低いほうの数字

ここが落とし穴だった。

売り場で目に入るのは、いちばん低い数字であることが多い。
「-5℃対応」と大きく書いてあって、小さい字で快適温度が5℃と書かれている、というのは珍しくない。
僕が持っていたものも、0℃は下限側の数字で、快適温度は7℃あたりだった。

つまりあの晩の8℃は、快適温度のぎりぎりだったことになる。
数字の上では合っていた。
合っていたのに寒かったのは、次の話が抜けていたからだ。

試験にはマットが敷いてある

この試験は、人が実際に寝るわけではない。

温度を測るセンサーを仕込んだ人形に寝袋を着せて、決まった条件の部屋で測る。
そして、その条件の中に「下に断熱マットを敷く」ことが入っている。

下からの冷えは、寝袋の担当ではない。
体重で押しつぶされた綿や羽毛はほとんど断熱しないので、背中側の暖かさはマットが持っている。
いい寝袋を買って薄いマットで寝るのは、屋根だけ立派にして床を抜いておくようなものだ。

マットの断熱の強さはR値という数字で表される。
夏なら1台でも足りるが、朝の冷え込みが出てくる時期は2から3、冬は4以上が目安になる。
僕が8℃で寒かったいちばんの理由は、たぶん寝袋ではなくマットのほうだった。

車中泊は、もっとずれる

車の中で寝るときは、この差はもっと開く。

地面ではなく金属の床で、下は外気がそのまま流れている。
土や芝生は少しは断熱してくれるが、鉄板は熱をどんどん逃がす。
おまけに車内は結露するので、寝袋の足元が湿って、湿ったところから冷える。

車中泊で眠れない理由を寝袋のせいにしていた時期があって、実際は床の傾きと段差だったという話は前に書いた
あれと同じで、寝袋の数字を上げても解決しないことが車の中には多い。
先に見るのは床のほうだ。

買い足す前に、五℃ぶんは布で稼げる

寒かった翌週、新しい寝袋を見にいこうとして、いったんやめた。

試したのは三つ。

ひとつ、寝袋の中に入れるインナーシュラフを足す。
フリースのものだと、体感でひと枚ぶんくらい違う。
洗うのもこちらだけで済むので、寝袋そのものを洗う回数が減るのもありがたい。

ふたつ、マットを厚いものに替える。
空気で膨らむタイプの10cmくらいのものにしたら、背中の冷たさが消えた。
これがいちばん効いた。

みっつ、寝る前に着替える。
昼に汗を吸った服のまま入ると、その湿気がひと晩じゅう体温を奪う。
乾いた長袖と靴下に替えるだけで、同じ寝袋が別物になる。

この三つで足りたので、寝袋は買い替えなかった。
新しいものを買うのは、これをやっても寒い日が来てからでいいと思っている。

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いまの選び方は、ひとつだけ

快適温度が、その場所で想定する最低気温より5℃低いものを選ぶ。

それだけ決めておけば、箱に書かれた大きい数字に引っぱられずに済む。
5℃という余裕は、疲れているとき、腹が減っているとき、雨で少し濡れたときのぶんだ。
規格の試験は健康な人が乾いた状態で測っているので、現場の条件はいつも試験より悪い。

それでも寒い夜は来る。
そのときに湯を沸かして湯たんぽを作れるかどうかが、最後の一枚になる。
数字を追いかけるより、そっちを覚えておくほうが早い。

※ 温度表示の三区分については EN 13537(ISO 23537 の前身にあたる規格)の解説 を2026年8月28日に確認しました。国内メーカーには独自表記のものもあるので、規格に沿った数字かどうかは製品ごとに確認してください。

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