探しものをしている時間が、いちばん長かった。小さいものだけ別扱いにした
荷物の積み方は何度も見直したのに、探しものは減らなかった。
見直していたのが、大きいものだけだったからだ。
夜の九時に、ヘッドランプの予備電池を探して荷室を全部下ろしたことがある。
暗い中で袋を開けては閉じ、開けては閉じ。
十五分ほどやって、結局そのへんに転がっていた。
隣のサイトの人が心配して見に来たくらいで、あれはさすがに恥ずかしかった。
荷物の積み方は何度も見直してきた。
箱を決めて、置き場所を決めて、上の空間まで使うようにした。
それでも探しものが減らなかったのは、見直していたのが大きいものだけだったからだ。
なくすのは、大きいものではなかった
思い返すと、探していたものはいつも小さい。
電池、ライター、結束バンド、ペグの予備、絆創膏、輪ゴム、ヘッドランプ、車の鍵。
テントを見失ったことは一度もない。
大きいものは置いた場所を体が覚えている。
小さいものは、置いた記憶そのものが残らない。
しかも小さいから、袋の底や隙間に落ちて、見えるところから消える。
箱を三つに決めたときの話は前に書いたけれど、あれは大きいものの住所を決めた話だった。
小物は、その三つの箱の中で行方不明になっていた。
中身の見えない袋を、全部やめた
いちばん効いたのは、袋を替えたことだった。
それまでは、もらったナイロン袋や、道具に付いてきた収納袋をそのまま使っていた。
色は黒か紺で、口を絞ると中は何も見えない。
開けないと分からない袋が、荷室に七つも八つもあった。
これを半透明のケースに替えたら、探す動作そのものが消えた。
開けて確かめるのではなく、見て分かる。
たったそれだけの違いなのに、暗いところでの差が大きい。
小分けのケースは、仕切りが固定されているものを選んだほうがいい。
仕切りが動くタイプは便利そうに見えて、車で走ると中で物が飛び越える。
着いたときに全部ひとつの部屋に集まっていて、意味がなくなっていた。
立てて入れると、上から全部見える
二つめは、寝かせるのをやめたことだ。
箱に平置きしていくと、下に入れたものは完全に死ぬ。
上のものを全部どかさないと見えないし、どかしたあとに戻すのが面倒で、そのへんに置く。
探しものが増える流れは、だいたいここから始まっていた。
細長いものは立てる。
ペグ、ペン、ライター、ガスの予備、工具。
立てて入る高さの箱を選ぶと、蓋を開けた瞬間に在庫が全部見える。
仕切りのある工具バッグに替えてから、修理道具を探すことがなくなった。
自立してくれるので、地面に置いても口が閉じない。
暗いところで片手が塞がっている状態だと、この差はかなり大きい。
使う場面ごとに分けたら、探す範囲が四分の一になった
三つめは、分け方を変えたことだった。
それまでは、種類で分けていた。
電気のものはここ、金属のものはここ、という具合に。
理屈は通っているのに、探すときにまったく役に立たなかった。
いまは場面で分けている。
火まわり、灯り、衛生、修理。
この四つだ。
火を起こそうとしている自分は、火の箱しか開けない。
探す範囲が最初から四分の一になる。
ライターと着火剤とグローブが同じ箱に入っているのは、種類で言えばばらばらだけれど、手が伸びる順番としては正しい。
分類は、物の性質ではなく、自分の動きに合わせたほうがいい。
これは荷室の上下を見直したときにも感じたことで、天井と背もたれを使い始めた回でも、置く場所は使う順番で決めるという話になった。
定位置を決めるより、戻す時刻を決めた
定位置を決めれば片づく、と思っていた時期がある。
決めた。
それでも散らかった。
使っているあいだは、定位置になんて戻さないからだ。
いま決めているのは、場所ではなく時刻のほうだ。
暗くなる前に一度、寝る前に一度、箱に戻す時間を作る。
作業としては三分もかからない。
これをやるようになってから、夜中に探すことがほぼなくなった。
暗い中で探すのがいちばん時間を食うので、明るいうちに戻しておけばそもそも探さずに済む。
道具の問題ではなく、順番の問題だった。
それでも見つからない日のために、予備を一箇所に集めた
最後にひとつ。
どれだけ整えても、なくすときはなくす。
だから予備だけを集めた小さなケースを、助手席の足元に置いている。
電池、ライター、絆創膏、結束バンド、ヘッドランプがひとつ。
ここは普段の運用には混ぜない。
探して見つからなかったときにだけ開ける箱で、開けたら次の買い物で補充する。
この箱を作ってから、探しものをやめる判断が早くなった。
五分探して出てこなかったら、あきらめてこっちを開ける。
夜の荷室を全部下ろすようなことは、もう起きていない。
荷物を減らすより、見えるようにするほうが効いた。
持っていく量はほとんど変わっていないのに、出発前も現地も静かになった。
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