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アメリカ政府が「AIの学習は著作権侵害ではない」と裁判所に言った。日本・EUと並べたら、答えが三つに割れていた

アメリカの司法省が、AIの著作権裁判に自分から口をはさんだ。
それも、AI会社の側に立つ形で。

朝のうちに見出しだけ見て、あとで読もうと思って閉じた。
夜になって開き直したら、思っていたより静かな話ではなかった。

アメリカの政府が、AIの裁判に自分から口をはさんだ。
それも、AI会社の側に立つ形で。

何があったのか

アメリカの司法省が、ニューヨーク・タイムズなどの新聞社とOpenAIが争っている著作権の裁判に、意見書を出した。
報じられたのは2026年9月2日で、提出はその前日から当日にかけてとされている。
場所はニューヨーク州南部地区の連邦地方裁判所だ。

裁判の当事者ではない政府が、自分の考えを裁判所に伝えるために出す文書がある。
今回出されたのはそれで、統合されている複数の出版社の訴訟に向けられている。

中身は、著作物でAIモデルを学習させることは著作権の侵害にあたらない、というものだった。
学習は元の作品を作り変える使い方にあたるので、フェアユースの範囲に入る、という筋になっている。

理由として挙げられているのが、産業や技術の話ではなく国の安全保障だった。
学習に許諾料を払わせる決まりにすると、アメリカでAIを作るのが難しくなる。
そうなれば、そういう縛りのない国が有利になる。
文書には、そうした決まりは「国の安全保障を脅かし、そうした制約を受けない外国の敵対勢力に競争上の優位を与える」という趣旨の言葉が入っている。

もう一つ、許諾料が要るようになると学習ができるのは大きな会社だけになり、少数による寡占が生まれる、という理屈も添えられていた。

署名者には司法次官のスタンリー・ウッドワードの名前が入っている。
この文書に法的な拘束力はない。
裁判所がこのとおりに判断しなければならないわけではなく、あくまで政府としての見方を示したものだ。
それでも、AI業界を相手取った数十の著作権訴訟に対して、アメリカ政府が正面から立場を書いたのはこれが初めてだとされている。

ニューヨーク・タイムズ側は受け入れていない。
広報担当は、政府が「一握りの一兆ドル規模のAI企業の側に立った」と述べ、AI企業は「自分たちの製品を成り立たせている中身に、きちんと対価を払えばいいだけだ」と返している。

もとの裁判は2023年に始まったものだ。
新聞社側は、何百万本もの記事が許可なく取り込まれたと訴えている。

僕がひっかかったところ

ひっかかったのは、この件そのものより、三つの地域を並べたときの絵のほうだった。

日本はもう答えが出ている。
学習のためなら、書いた本人の同意はいらない。
そのことはAIの学習のためなら、本人の同意はいらない。日本でそう決まったに書いた。

ヨーロッパは違う道を通っている。
そもそもフェアユースという考え方がなく、代わりに文章やデータを機械に読ませることを認める例外があって、そこに権利者が「うちのは使うな」と申し出る仕組みがくっついている。
そしてEUのAI法は、どこで学習させたかにかかわらず、その申し出を尊重しろと求めている。
つまりアメリカの裁判所がフェアユースを認めたとしても、ヨーロッパでの義務はそのまま残る。

ここが引っかかった。
同じ一本の記事が、どこの誰に読まれるかによって、扱いの決まりが変わる。
僕が書いたものは僕のサーバーに一つあるだけなのに、それに掛かる規則は一つではない。

二つ目のひっかかりは、理由が安全保障だったことだ。

これまでこの話は、著作権の話として進んできた。
作った人の権利と、使う側の便宜を、どこで線引きするか。
個人でものを書いている側からしても、争っている土俵は分かった。

安全保障が理由になると、土俵が変わる。
僕が書いたものを使わせるかどうかが、僕と相手の間の話ではなくなって、国と国の話の材料になる。
そこに個人の書き手が座る椅子は、たぶん用意されていない。

三つ目は、寡占を防ぐという理屈のほうだった。
許諾料が要るようになると、払える大企業しか学習できなくなる。
言われてみればそのとおりで、理屈としては筋が通っている。

ただ、この理屈で守られるのは「学習する側の小ささ」であって、「書く側の小ささ」ではない。
小さい書き手が対価を受け取れるようになるかどうかは、この議論の中に入っていない。
同じ「小さい者のために」でも、指している人が違う。

去年、学習に海賊版が混ざっていて15億ドルで手打ちになった件を書いたときは、まだお金で解決する話に見えていた。
今回はお金の話ですらない。

で、僕はどうするか

まず、書くのはやめない。
使われるのが嫌だから書かない、という順番にはしたくない。
それをやると、使われないかわりに読まれもしない。

そのうえで、三つ決めた。

一つ目は、robots.txt をもう一度見ること。
これはRedditのrobots.txtを開いたら、全部断っていたを書いたときに一度やって、そのままにしてある。
断るかどうかを決めるためというより、いまの自分の判断が何年前のものかを確かめるためだ。
今回のように前提が動く年は、置いたままのファイルが一番古くなる。

二つ目は、うちのサイトの中身のうち「取り込まれても平気なもの」と「取り込まれたら価値が消えるもの」を、自分の中で分けること。
調べれば分かる説明は、取り込まれても構わないと思っている。
自分が失敗した話、現地で見た実物、写真、日付の入った記録。
このあたりは取り込まれても再現されないから、結果的に残る。
守り方としては地味だが、法律の側の答えが地域ごとに割れている以上、法律に守ってもらう前提で組むのは無理がある。

三つ目は、この話の続きを追いかけること。
拘束力のない意見書だから、今日は何も変わっていない。
変わるとしたら判決が出るときで、それは今日ではない。
今日分かったのは、判決が出るときにどちらの向きの風が吹いているか、だけだ。

ひとつだけ、正直に書いておく。
僕はこのサイトを書くのにAIを使っている。
使う側であることを棚に上げて、使われる側の顔だけで怒るのは筋が通らない。
それでも、自分の書いたものが自分の知らないところで材料になる決まりが、自分の住んでいる国の外で決まっていくのは、落ち着かない。

出典

※ 日付・引用・当事者の発言は2026年9月3日時点で上記3件を確認したものです。
提出日については「9月1日」と「9月2日」で報道に食い違いがあったため、確実な範囲で書いています。

まる子パパ

まる子パパ

会社員。受託開発のエンジニアで、その前は寿司職人・長距離運転手・農業。 技術ブログは、キャンプの合間に踏んだバグと、AI・Web開発の運用の失敗を書いています。 このサイト自体が、開発に携わっているCMS「コンテナ」の稼働中の実例です。 このサイトについて

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