ポータブル電源、容量の前に「電池の種類」を見てほしい。リン酸鉄という選択

スペック表の容量(Wh)ばかり見ていた僕が、3年目の電源がまだ元気な理由に気づいた。
鍵は、セルに書かれた「リン酸鉄」の4文字だった。

冬の車中泊で電気毛布を点けたまま眠って、朝、まだ電源のバッテリー残量が半分以上あった。
うちのメイン電源はもう3年目になるのに、へたる気配がない。
これがちょっと不思議で、しばらく考えていた。

というのも、その前に使っていた安いポータブル電源は、1年ちょっとで急に持ちが悪くなったからだ。
満充電にしても、以前ほど長くもたない。
同じように使っていたのに、この差はどこから来たんだろう。

答えは、スペック表のいちばん地味なところに書いてあった。
「リン酸鉄」という、電池の種類の話だ。

容量(Wh)ばかり見ていた

正直に言うと、ポータブル電源を選ぶとき、僕がまず見ていたのは容量だった。
何ワットアワー(Wh)あるか、つまりどれだけ電気をためられるか。
その数字と、あとは価格。だいたいこの2つで決めていた。

でも容量というのは「一度にどれだけ入るか」でしかなくて、「何年もつか」とは別の話だった。
水筒でたとえるなら、容量は水筒の大きさ。
でも僕がほんとうに気にすべきだったのは、その水筒が何回洗って使えるか、のほうだったんだと思う。

セルの正体は「リン酸鉄」だった

ポータブル電源の中身は、たくさんのリチウムイオン電池(セル)だ。
ここで大きく2つの系統に分かれる。
ひとつがリン酸鉄リチウム、英語の頭文字でLFPと呼ばれるもの。
もうひとつが三元系、ニッケルやコバルトを使うタイプで、NMCと呼ばれる。

スマホやノートパソコン、電気自動車で主流なのは三元系のほう。
小さくて軽いのに大きなエネルギーを詰め込めるのが得意で、持ち歩く機器と相性がいい。
対してリン酸鉄は、同じ容量ならどうしても重く大きくなる。
その代わり、長く使えて熱にも強い、という性格をしている。

リン酸鉄(LFP)と三元系(NMC)を、サイクル寿命・熱への強さ・軽さ・価格のこなれの4項目で棒グラフ比較した概念図
ふたつの電池の性格を並べてみた。リン酸鉄は寿命と熱の強さで勝り、三元系は軽さで勝る(傾向を表したイメージ図)

サイクル寿命という、地味だけど効く差

この2つを分ける、いちばん実感しやすいのが「サイクル寿命」だ。
充電と放電を1回すると、1サイクル。
これを何回くり返すと電池がへたるか、という回数のことをいう。

ざっくり言うと、三元系は数百回のオーダー。
リン酸鉄は数千回のオーダーで、桁がひとつ違ってくる。
毎日のように充放電するなら、この差はそのまま寿命の差になって表れる。
3年目のうちの電源がまだ元気なのは、たぶんここが効いていた。

熱に強い安心。ただし、良いことばかりでもない

リン酸鉄のもうひとつの長所が、熱への強さだ。
電池は使い方を誤ると発熱して危ないことがあるけれど、リン酸鉄は構造的にそこが起きにくいとされる。
夏の車内という、電池にとってなかなか過酷な場所に置くことが多い僕にとっては、これは地味に効く安心材料だった。

とはいえ、良いことばかりではない。
さっき書いたとおり、同じ容量なら重くて大きい。
手で持ち運ぶことが多い人にとっては、この重さは無視できないデメリットになる。
どんな道具でもそうだけど、ここは完全に使い方しだいだと思う。

ついでにひとつ、誤解しやすい点も書いておく。
リン酸鉄は熱に強いけれど、寒さに強いわけではない。
氷点下での充電はどちらの電池も苦手なので、冬に外へ出しっぱなしで充電するのは避けたほうがいい。

じゃあ、何を見て選べばいい

難しい話に聞こえるけれど、選ぶときにやることはシンプルだ。
製品ページやスペック表で「リン酸鉄」「LFP」「LiFePO4」のどれかの表記を探すだけ。
この3つは全部同じものを指している。
見あたらなければ、たいていは三元系だと思っていい。

毎日は使わない、とにかく軽くコンパクトに持ち歩きたい、という人なら三元系でも十分だと思う。
でも、車中泊やキャンプで何年も付き合う相棒として選ぶなら、僕はリン酸鉄をすすめたい。
初期費用は少し高くても、長い目で見れば元が取りやすい買い物になりやすい。

長く付き合う道具として

うちのメイン機は EcoFlow DELTA 2 Max で、これもリン酸鉄のタイプだ。
選んだときは正直、容量と価格しか見ていなかったから、寿命の長さは半分たまたまだった。
でも3年使ってなお元気な姿を見ると、この選択は結果的に正解だったと思う。

ポータブル電源は、安い買い物ではない。
だからこそ、容量やデザインの前に、いちど中身の電池の種類まで覗いてみてほしい。
スペック表の隅にある「リン酸鉄」の4文字が、何年も先の満足を静かに決めていたりするのだから。

この記事に出てきた電源(リン酸鉄タイプ)

3年使ってきた実際の使用感や、電気毛布・コタツをどれくらい動かせたかは EcoFlow DELTA 2 Max の実測レビュー に、
ほかの電源やキャンプ道具の使い込みレビューは ギアレビュー一覧 にまとめてある。うちは電源系がとくに厚めです。

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