2026.09.15 泊まれる場所4,223 立ち寄りスポット46,522 営業中を確認したキャンプ場1,005 note を読む

栗の虫出しと下処理|直売所の栗は、外から見て虫入りを見分けられない

穴も糞も出さない虫がいると知って、選び方の前提が変わった。
産地がやっている処理を調べたら、殺すことと甘くすることが同じ作業だった。

九月に入ると、直売所の入口に栗の袋が積まれる。
値段は店で買うより明らかに安い。
虫が入っているかもしれないから、というのが理由だと聞いたことがある。

去年、一袋買って帰って、その晩に鬼皮を剥いていた。
五粒目くらいで、白い幼虫が出てきた。

その場では、自分の選び方が悪かったのだと思った。
穴の開いていないものを選んだつもりだったし、糞のようなものが付いた粒は袋の中でも避けたつもりだった。

あとで調べて、そこがそもそも間違いだったと分かった。

外から見分けられないのは、こちらの目のせいではない

栗の中にいる虫の代表格は、クリシギゾウムシという。
農研機構がまとめた資料に、この虫の生態が整理されている。

成虫が出てくるのは主に八月以降で、九月上旬以降に栗へ産卵を始める。
産み方が念入りで、毬の上から口吻で穴を開けて、そこへ産卵管を挿して渋皮に卵を置いていく。
ふ化した幼虫は、実の中を食べて育つ。

問題は、そのあとだ。
資料にはこう書いてある。
「クリシギゾウムシが果実に産卵した痕は小さく、また幼虫は果実の外に虫糞を出さないため、被害果を見分けることが難しい」。

穴も残らないし、糞も出てこない。
中で食べているのに、外側からは何も分からない。

これが厄介なのは、糞を出す虫のほうが存在することだ。
クリミガの被害果は、座の部分から細かい粒状の糞を外に出すので、比較的見分けやすい。
モモノゴマダラノメイガは毬の内側まで食べて、もっと大きな粒の糞を出す。

つまり、糞が付いている粒を避ける、というやり方は、見つけやすい虫だけを避けている。
いちばん多い相手には、その方法が効かない。

それと、九月に並ぶ栗というのは、産卵の季節をちょうどくぐってきたものだ。
同じ資料に、九月中旬より前に収穫する早生の品種はこの虫の被害を受けないのが普通で、中生以降の品種は産卵を受けるので対策が要る、とある。
秋が深まるほど、袋の中に入っている確率は上がっていく。

産地は「殺す」と「甘くする」を同じ処理でやっていた

ここからが、僕がいちばん面白いと思ったところだ。

産地では、収穫したあとの栗に二つの処理をしている。
ひとつは温湯処理で、五十度の湯に三十分ひたして殺虫する。
もうひとつが氷蔵処理で、マイナス二度で三、四週間おいておく。

時間だけ見れば、湯のほうが圧倒的に早い。
それでも氷蔵をやる産地がある理由が、資料にはっきり書いてある。
「見た目の変化が無く、クリの糖度が増し食味が向上するという大きなメリットがある」。

どのくらい増すのか。
茨城県の農業総合センターが出した試験の数字が、思っていたより極端だった。
マイナス三度に設定した庫で二十一日おいた栗の平均糖度が17.1、二十八日で16.5。
何もしていない栗は9.6だった。

この試験は電極を仕込んだ特殊な冷蔵庫を使っていて、家の冷蔵庫でそのまま再現できる話ではない。
同じ試験で、二十一日おいた区は虫が一匹も出てこなくなっている。

殺虫のためにやっている冷やしが、そのまま甘さになっている。
栗は寝かせると甘くなる、という言い方をよく聞くけれど、産地では味の話ではなく虫の話としてこれをやっていた。

家でやっているのは、二つだけ

設備の話をしても仕方がないので、僕が台所でやっていることを書く。

買ったその日に、水へ沈める。

ボウルに水を張って、栗を全部入れる。
浮いてきた粒を外へ出す。
中に空洞があるものが浮くので、食われた粒はここで拾えることが多い。

これは選別であって、確実ではない。
乾いて軽くなっただけの粒も浮くし、沈んだからといって中身が無事だとは限らない。
それでも、剥く前に何粒か減らせるだけで、あとの作業がだいぶ楽になる。

すぐ食べないぶんは、冷蔵で寝かせる。

新聞紙に包んで、ポリ袋に入れて、冷蔵庫のいちばん冷たい段に置く。
一週間から二週間。
産地のマイナス二度には届かないので、虫が死ぬところまでは期待していない。
甘くなる方向は同じなので、その分だけもらう、という気持ちでやっている。

寝かせている間に虫が出てくることはある。
老熟した幼虫は実に丸い穴を開けて出てくるので、袋の底に穴の開いた粒と抜け殻みたいなものが転がる。
気持ちのいい光景ではないけれど、それは「そこにいた」というだけの話だ。

湯を使うなら、乾かすところまでが一つの作業

五十度三十分という数字を知ってから、家でも湯を使ってみようかと考えた。
大きな鍋と温度計があれば、できなくはない。

やめた理由は、資料の続きにある。
温湯処理のあとには乾燥の工程が要って、「乾燥が不十分だと果実表面にカビが発生しやすくなる」と書いてある。
産地でも、広げて乾かす場所をどれだけ取れるかで一日の処理量が決まる、という話になっている。

湯に入れて終わり、ではない。
濡れたまま袋に戻すと、虫の代わりにカビが来る。

いま僕がやっているのは、剥くために沸かした湯で兼ねる形だ。
火を止めた湯に栗を放り込んで、そのまま冷めるまで置く。
鬼皮がやわらかくなって剥きやすくなるし、そのあとすぐ剥いてしまうので濡れたまま置く時間がない。
殺虫のための処理として数えてはいない。あくまで剥くための湯だ。

剥いていて虫が出たら、その一粒だけ捨てる

最初に袋を開けた日は、一匹出た時点で全部捨てようかと思った。
それはやらなくていい。

幼虫は自分の入った実の中を食べているだけで、隣の粒へ移っていくわけではない。
出てきた粒を捨てて、手を洗って、次を剥けばいい。

ただ、買ってから何日も常温で置くのは避けている。
中で育つほど食べられる部分が減るし、出てきたやつが袋の中を歩く。
直売所で野菜を選ぶときに安くなってからのほうがいいと書いたけれど、栗については早く買って早く処理するほうが結局よかった。

キャンプへ持っていくなら、家で終わらせておく

焚き火で焼き栗をやりたい日は、家で選別だけ済ませてから持っていく。
水に沈めて、浮いたぶんを抜いて、それだけ。

現地でやるのは、鬼皮の丸いほうに包丁で深く切れ目を入れることと、火の端に置いておくことだけだ。
切れ目を入れないと中の水分で破裂する。
網の上に載せてもいいけれど、僕は熾火の脇に転がしておくほうが失敗が少ない。

掘りたてのさつまいもが甘くなかった話を前に書いたけれど、栗も同じで、収穫したてがいちばん甘いわけではない。
待つと甘くなる作物は、買った日から数えて何日目に食べるかを決めるところまでが下ごしらえだと思っている。

包丁のことはおすすめギアのページにも少し書いたけれど、栗の鬼皮を剥くのは刃にとってかなり乱暴な作業になる。
いい包丁を持っていく必要はない。

直売所の栗が安いのは、選別の手間をこちらに渡しているからだ。
その手間の中身が「外から見分けること」ではなく「水に沈めて寝かせること」だと分かってから、買うのが気楽になった。

出典

※ 数値は2026年9月5日時点で各資料を確認したものです。温湯処理・氷蔵処理はいずれも産地向けの技術で、家庭の調理器具や冷蔵庫で同じ殺虫効果が得られるものではありません。

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