箱に書いてあった保冷時間を信じたら、昼過ぎに氷が消えていた。数字には条件がついている
表示は嘘ではなかった。
何を測った時間なのかが、どこにも書いていなかっただけだった。
箱に書いてあった保冷時間を信じて買った。
朝に氷を入れて、昼過ぎに開けたら、もう水になっていた。
不良品をつかまされたのかと思ったけれど、そうではなかった。
書いてある時間は嘘ではなくて、僕がその数字の読み方を知らなかっただけだった。
表示の時間は「氷が全部溶けるまで」ではない
まず引っかかったのが、何を測った時間なのかがどこにも書いていないことだった。
保冷時間の表示には、決まった測り方の取り決めがない。
温度計を入れて中の温度が一定を超えるまでを測ったのか、氷が溶けきるまでを測ったのかで、出てくる数字はまるで違う。
同じ箱でも、条件を変えれば倍近く差が出る。
条件というのは、こういうものだ。
外の気温が何度だったか。
箱をあらかじめ冷やしてあったか。
中身をどれくらい詰めたか。
そして、測っている間に何回開けたか。
試験の場では、たいてい一度も開けない。
実際のキャンプでは、僕は昼までに七、八回は開けている。
同じ箱を使っていても、条件が違えば別の道具として振る舞う。
だから、条件の書いていない保冷時間は、箱同士を比べるためには使えない。
同じ会社の同じ測り方どうし、大きい箱と小さい箱を比べるくらいが精一杯だと思っている。
持ちを決めているのは、壁の厚さと素材だった
数字より、箱の作りを見たほうが早い。
中に入っている断熱材で、だいたいの性格が決まる。
いちばん安いのが発泡スチロールで、軽くて扱いやすい。
ただ、薄いと途端に効かなくなるので、値段のわりに厚みがある箱を選ばないと意味がない。
その上が発泡ウレタン。
同じ厚みならスチロールより効くので、持ち歩ける大きさに収めやすい。
いま僕が普段使っているのはこの手のものだ。
いちばん効くのが真空の断熱パネルを入れたもので、これは別物と言っていいくらい持つ。
そのかわり重いし高い。
車から降ろして運ぶ距離が長い人には向かないと思う。
畳めるやわらかいタイプは、壁が薄いぶん保冷では硬い箱にかなわない。
それでも僕が積んでいるのは、畳めるからだ。
帰り道の荷室で場所を取らないことのほうが、その日は大事だったりする。
いちばん効いたのは、箱を買い替えることではなかった
効くと分かってからずっと続けているのが、前の晩に箱ごと冷やしておくことだ。
常温の箱に氷を入れると、氷はまず箱を冷やすために溶ける。
壁の分厚い箱ほど、この最初の持ち出しが大きい。
前の晩に保冷剤をひとつ放り込んで蓋をしておくだけで、朝入れた氷の減り方がはっきり変わった。
次に効いたのが、隙間を減らすこと。
空いている場所には空気が入っていて、蓋を開けるたびにその空気がそっくり入れ替わる。
半分しか入っていない箱は、半分ぶんの外の空気を毎回招き入れていることになる。
足りないときはペットボトルを凍らせて詰めておくと、隙間も埋まるし溶けたら飲める。
三つめが、開ける回数。
これは箱の中に段を作った回でも書いたのだけれど、減っているのは時間ではなく開けた回数のほうだった。
飲み物とその日食べるものを同じ箱に入れていると、飲み物のために食材まで温めることになる。
いまの使い分け
硬い箱は「朝閉めたら開けない箱」にした。
二日目以降に食べるものと、溶けてほしくない氷だけを入れる。
畳めるやわらかい箱は「何度でも開ける箱」で、飲み物とその日の昼に使うものが入っている。
入れ方は、冷たい空気が下に落ちることを前提にしている。
氷は下、保冷剤は上。
その間に一枚はさんで、食材が溶け水に浸からないようにする。
保冷剤の効かせ方は凍らせ方で持ちが変わる回に書いたとおりで、厚みのあるものを一つ入れておくと、氷が溶けきる時刻が後ろにずれる。
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数字の読み方を変えた
保冷時間の表示を、いまはこう読んでいる。
この箱が、いちばん条件のいい状態でどこまで行けるかを示した上限値。
自分の使い方だと、そこから何割か引いたあたりが現実の線になる。
その何割かを決めているのは箱ではなくて、予冷したかどうかと、開けた回数だ。
どちらも、買ったあとに自分で動かせるところにある。
結局のところ、箱を買い替える前にやることが二つ残っていた。
前の晩に冷やしておくことと、開ける用と開けない用を分けること。
これで足りなければ、そのときに壁の厚い箱を探せばいい。