氷はまだ残っているのに、二日目の肉だけ色が悪かった。箱の中に段を作ったら止まった
クーラーボックスの中は、どこも同じ温度だと思っていた。
上と下では、思っていたよりずっと違っていた。
二泊した朝、クーラーボックスを開けたら肉のパックの色が変わっていた。
氷はまだ半分以上残っている。
蓋も閉まっていたし、日陰に置いていた。
それなのに、下に沈めていたはずの飲み物は冷たいままで、肉だけがぬるい。
何が起きているのか、しばらく分からなかった。
箱の中は、上と下で温度が違う
気になって、外にセンサーの伸びる温度計を買った。
センサーだけ箱の中に垂らして、蓋の外で数字を見られるものだ。
入れる位置を上と下で変えて測ってみると、はっきり差が出た。
冷たい空気は下にたまる。
だから箱の底のほうが低く、蓋に近いほうが高くなる。
そのうえ蓋を開けるたびに、上の空気から先に入れ替わる。
一日に何度も開ける箱の上段は、いちばん条件が悪い場所だった。
僕はそこに、いちばん傷みやすい肉を置いていた。
取り出しやすいから、という理由だけで決めていた。
段を決めてしまう
それからは、入れる前に置き場所を決めることにした。
底には氷、その上に肉と魚。
これらは箱の中でいちばん低い層に置く。
真ん中に日持ちのする野菜や調味料。
上のほうに飲み物と、すぐ食べるもの。
板状の保冷剤は、上に一枚のせる。
冷たい空気は下へ降りるので、上から蓋をするように置いたほうが箱全体に効く。
底だけを冷やしても、上の層はあまり変わらない。
気をつけているのは、凍らせたくないものを保冷剤に直接くっつけないことだ。
葉物と卵は一度これで痛い目を見た。
薄い板を一枚挟むか、位置をひとつずらすだけで避けられる。
仕切りやトレイの付いた箱なら、そもそも層が最初から分かれているので迷わない。
いちばん効いたのは、開ける回数を減らしたこと
段を決めたあとで、もうひとつ変えた。
飲み物を別の箱に移した。
飲み物は一日に何度も出し入れする。
そのたびに、食材の入った箱まで開けていた。
安い発泡スチロールの箱でいいので、飲み物用をひとつ分けるだけで、食材側の箱を開ける回数が三分の一くらいになった。
食材側は、朝と夕方の二回しか開けないと決めている。
何を出すかを先に考えてから開ける。
これだけで、二日目の夕方の状態がまるで変わった。
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数字を見ると、思い込みが直る
温度計を入れて分かったのは、自分の感覚がだいぶ雑だったということだった。
氷が残っている、蓋が冷たい、手を入れたら冷える。
それは箱全体が冷えている証拠にはならない。
家の冷蔵庫と同じくらいを保てているかどうかを、数字でひと目見る。
下がりきっていなければ、蓋を開ける回数を減らすか、氷を足すか、置き方を変えるか。
やることは決まっているので、判断は早い。
寿司屋にいた頃、ネタの置き場所は段ごとに決まっていた。
どこに何を置くかで日持ちが変わることを、当たり前として教わっていたはずなのに、外に出ると忘れていた。
クーラーボックスは小さな冷蔵庫だと思えば、やることはそう変わらない。

