夏じゅう使った寝袋を、洗わずにしまっていた。次に開けたときの匂いで思い知った
外側は汚れていないから、洗わなくていいと思っていた。
汚れていたのは、いつも体が当たっていた内側のほうだった。
秋にしまった寝袋を、翌年の春に出した。
袋から引っぱり出した瞬間、酸っぱいような匂いが上がってきた。
汚れた覚えはない。
泥もついていないし、破れてもいない。
それでも匂う理由が、その時の僕には分からなかった。
汚れているのは、外側ではなく内側だった
寝袋で汚れるのは、地面に触れている外側だと思い込んでいた。
実際に汚れをためこむのは、一晩じゅう体が当たっている内側のほうだ。
人は寝ているあいだに、季節を問わずコップ一杯ぶんくらいの汗をかくと言われている。
夏の夜、しかも風の通らないテントの中なら、それどころではない。
その汗と皮脂は、生地の表面で止まらずに中綿まで入っていく。
外から見て汚れていないのは、汚れが内側に沈んでいるからだった。
匂いのもとは、そこで増えたものだ。
中綿がへたって前より寒く感じるようになるのも、汚れが繊維に絡んで空気の層をつぶすからだと後で知った。
洗えるかどうかは、タグに書いてある
まず縫い付けられている表示を見る。
化繊の中綿なら、家庭の洗濯機で洗えるものが多い。
大きめのネットに入れて、弱い水流で、脱水は短く。
ネットは布団や毛布が入る大きさのものを使うと、生地が偏らずに済む。
ダウンの寝袋は、専用の洗剤を使う。
普通の洗剤は羽根の油分まで落としてしまい、膨らまなくなる。
洗ったあとに羽根が戻らなくなった話は、たいていここが原因だ。
どちらの場合も柔軟剤は入れない。
表面の撥水が効かなくなるし、繊維がへたって保温力が落ちる。
「いい匂いをつける」ことと「保温する」ことは、この道具では両立しない。
洗うことより、乾かすことのほうが難しい
失敗しやすいのは洗濯ではなくて、そのあとだった。
表面が乾いていても、中綿の芯には湿りが残る。
そのまましまうと、次に開けたときにあの匂いが待っている。
僕は物干し竿を二本使って、寝袋を筒のまま渡して干すようにした。
たたんで干すと、重なった面がいつまでも乾かない。
日なたに置きっぱなしにするより、風の通る日陰に長く置いたほうが、生地も傷まず中まで乾く。
一日では終わらない。
二日、三日かけるつもりで始めたほうがいい。
ダウンなら、最後に低温の乾燥機を短時間かけると固まった羽根がほぐれる。
手で軽く叩いてやると、目に見えて膨らみが戻る。
このひと手間で、来シーズンの暖かさがだいぶ変わる。
しまい方で、来年の膨らみが決まる
買ったときに付いてくる小さな収納袋は、持ち運ぶための袋であって、保管するための袋ではない。
あの中に一年入れっぱなしにすると、中綿はつぶれたまま形を覚えてしまう。
大きめの袋にゆるく入れるか、押し入れの中で吊るしておくのがいい。
置き場所は、床に近い下段を避ける。
湿気は下にたまるし、ダニは布と暗さと湿りがそろった場所を好む。
防ダニの収納袋に入れておくと、そのあたりの心配はだいぶ減る。
使う前に一度出して風を通す、というのを衣替えのついでにやると忘れない。
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寝袋は、シーズンの終わりに手をかける道具だと思う。
使う前に慌てて洗っても、乾かす時間が足りない。
夏が終わったいまが、いちばん都合のいい時期だった。
洗って、しっかり乾かして、ゆるく寝かせておく。
それだけで、次に開けたときの気分がまるで違う。