年収60万円の人は、年収120万円の人より社会保険料の「率」が重い|10月の制度改正を自分のツールで計算した
10月1日から「106万円の壁」が無くなる。
その話を書くために年収を変えて計算させたら、年収が低いほうが負担の「率」が重かった。
厚生年金の標準報酬月額には、月88,000円という下限がある。
10月1日から「106万円の壁」が無くなる。
その話を書くために、自分のサイトに置いている手取り計算のツールで、年収をいくつか変えて計算させてみた。
出てきた数字を並べて、しばらく画面を見ていた。
年収が低いほうが、負担の「率」が重かった。
並べてみた数字
週20時間以上働いていて、10月以降に社会保険へ入ることになった場合。
東京都・35歳・協会けんぽという条件で、1年間に払う社会保険料はこうなる。
- 年収60万円 134,702円 負担率 22.5%
- 年収80万円 141,750円 負担率 17.7%
- 年収100万円 154,846円 負担率 15.5%
- 年収120万円 172,874円 負担率 14.4%
年収が半分になっても、保険料は2割ちょっとしか減らない。
率でみると、60万円の人は120万円の人の1.5倍以上を負担することになる。
犯人は「標準報酬月額」の下限
なぜこうなるのか。厚生年金の保険料の決め方にある。
保険料は実際にもらった給料ではなく、標準報酬月額という区分に当てはめて計算される。
区分は32等級あって、第1等級が88,000円。これが下限だ。
つまり月5万円で働いていても、月7万円で働いていても、厚生年金の計算上は「88,000円もらっている人」として扱われる。
保険料率は18.3%で労使折半なので、本人負担は月8,052円。年間で96,624円。
この額は、月額88,000円に届かない人なら誰でも同じになる。
実際、上の表で年収60万円・80万円・100万円の厚生年金保険料は、3つとも96,624円でまったく同じだった。
違っているのは健康保険料のほうだけで、こちらは下限が58,000円なので少しは収入に連動する。
健康保険の下限(58,000円)より厚生年金の下限(88,000円)のほうが高い。
このズレが、低い年収帯で負担率を押し上げている。
「働きやすくなる」で終わらせたくなかった
制度改正のニュースを読むと、壁が無くなって働く時間を気にしなくてよくなる、という書かれ方が多い。
それは間違っていない。年収の区切りを意識して就業調整する必要はなくなる。
ただ、いちばん影響を受けるのは、いちばん収入が少ない人たちだった。
月5万円で働いている人が、10月から年に13万円を負担することになる。手取りでみれば2割以上が消える。
この非対称に触れている解説を、僕はまだ見かけていない。
下限があること自体はどの資料にも書いてあるのに、それが「率の逆転」として現れることは、並べて計算するまで見えてこない。
もちろん払った分が消えるわけではない。
厚生年金の記録は増えるので、将来受け取る額は上がる。傷病手当金も出産手当金も使えるようになる。
損だと言いたいのではなく、10月から手取りが減る人がいることと、その減り方が収入の少ない人ほどきついことを、減ってから気づくより前に知っておきたかった。
で、僕はどうするか
計算したものを自分の中に置いておいても仕方がないので、ツールのほうに組み込んだ。
年収を入れて「制度の時点」を10月以降に切り替えると、自分の場合いくら減るのかと、額面に対して何%なのかが出るようにした。
数字は人によって違う。勤務先の規模が50人以下ならまだ対象にならないし、週20時間に届いていなければ関係がない。
だから一般論ではなく、自分の条件で確かめてもらうのがいちばん早いと思う。
手取りを増やそう! で試せます。入力した内容は端末の外に出ません。
出典
- 厚生年金保険料額表|日本年金機構(第1等級 88,000円・折半額 8,052円)
- 厚生年金保険の保険料|日本年金機構
- 「年収の壁」への対応|厚生労働省
ほかにも書いています
note・スタンプ※noteは運営者が個人で書いているものです。
