AIへの指示は具体的に書く|「念のため」を一行消したら、下調べの量が半分になった
一行だけ直せば終わるはずの修正で、関係のないファイルを十五個ほど読みに行っていた。
原因は指示書に書いた「念のため」の一言だった。
指示書を書くとき、僕はよく「念のため」と付け足していた。
念のため周辺のファイルも見ておいて。
念のため関連しそうな箇所も確認して。
悪気はなく、むしろ丁寧なつもりだった。
「念のため」は、決めていないことの言い訳だった
ある日、一行だけ直せば終わるはずの修正を頼んで、戻ってきたログを見て驚いた。
関係のないファイルを十五個ほど読みに行っていた。
理由をたどると、指示書のテンプレートに書いていた「念のため周辺も見ておくこと」という一文が、そのまま実行されていた。
僕は「念のため」という言葉に、自分でも説明できる範囲を決めていなかった。
どこまでが周辺で、どこからが関係ないのか。
書いた本人が線を引いていないのだから、広く取られても文句は言えない。
要るものだけを渡すと、往復が減った
試しに、指示書から「念のため」「一応」「万が一」という言葉を全部消してみた。
代わりに、直すファイルの場所と、直したあとどう動けば正解かだけを書いた。
前に終わったと分かる形を先に書くという話をしたことがある。
あれは「ゴールの形」を渡す話で、今回は逆に「渡さなくていい条件を削る」話になる。
ゴールを絞るのと、道筋を絞るのは、似ているようで別の作業だった。
結果は思ったよりはっきり出た。
同じ修正が、読みに行くファイルの数でだいたい三分の一、かかる時間も目に見えて短くなった。
探索が減ったぶん、出てくる答えのほうも狙った的から外れにくくなった。
曖昧さは、相手に丸ごと判断を投げているのと同じだった
「念のため」を消してみて気づいたのは、あの言葉が指示ではなく判断の先送りだったということだ。
どこまで調べるべきかを自分で決められないとき、人はその判断ごと相手に渡してしまう。
相手が人間なら、空気を読んで手加減してくれることもある。
AIは空気を読まない代わりに、書いてある言葉をそのまま律儀に実行する。
「念のため広く見て」と書けば、本当に広く見に行く。
曖昧さを見逃してくれない分、こちらの詰めの甘さがそのまま結果に出てくる。
いまは指示を書く前に、一つだけ自分に聞く
これは本当に要る条件か。
それとも、決めるのが面倒で足しているだけか。
答えられないときは、たいてい後者だった。
条件を削るというのは手を抜くことではなく、自分が何を求めているかを先に決める作業なのだと思う。
決められていない日ほど、「念のため」を書きたくなる。
いまはその一言が出そうになったら、代わりに具体的な範囲を一行書くようにしている。
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