訪問者数がいちばん多かったのは、僕だった。解析が数えていたのは人ではなかった
平日の午前中だけ、決まって訪問がひとつ立っていた。
正体は自分で、そこから解析が何を数えているのかを調べ直した。
先月の数字を眺めていて、妙なことに気づいた。
平日の午前中だけ、決まって訪問がひとつ立っている。
曜日も時間帯もきれいに揃っていて、誰かが習慣で見に来てくれているみたいだった。
正体は僕だった。
記事を書き終えて、表示の確認に自分のサイトを開いていた時間そのものだった。
数えてもらっているつもりでいたけれど、機械が何を数えているのかを、僕はちゃんと分かっていなかった。
数えているのは人ではなく、ブラウザに置いた小さな印
アクセス解析は、訪ねてきた人の顔を見ているわけではない。
ページが開かれたとき、そのブラウザの中に小さな印をひとつ置く。
次に同じブラウザが来たとき、その印が残っていれば「さっきの人がまた来た」、無ければ「初めての人が来た」と判断する。
やっていることはそれだけで、とても素朴な仕組みだ。
素朴なぶん、人間の感覚とはずれる。
同じ僕が、スマホとパソコンで一回ずつ見れば二人になる。
ブラウザの履歴を消せば印も消えるので、同じ日のうちに何度でも新しい人になれる。
家族が一台のパソコンを交代で使っていれば、何人いても一人として数えられる。
つまり画面に出ている「訪問者数」は、人の数ではなくて、印の付いたブラウザの数だ。
そう言い換えるだけで、数字との距離が急に近くなった。
「1回の訪問」も、人間の感覚ではなく決まりごとだった
もうひとつ勘違いしていたのが、訪問の区切り方だった。
ページを閉じたら1回が終わる、と思い込んでいた。
実際には、閉じたかどうかを機械は知らない。
そのかわり「一定の時間、何も操作がなかったら、そこでいったん区切る」という決まりで数えている。
よく使われている既定値は三十分だ。
記事を開いたまま昼飯を食いに出て、戻ってきて続きを読んだら、それは二回になる。
逆に、日付をまたいで読み続けた場合も途中で区切られる。
だから「一人あたり何回来たか」という数字は、来た回数というより、機械が決めた区切りの数だ。
そこを知らずに前の月と比べて、増えた減ったと騒いでいた時期がある。
いちばん熱心に通っていたのは、自分だった
冒頭の話に戻る。
自分の見た回数が混ざるのは、作っている人間にとっては避けようがない。
書いて、直して、表示を確かめる。
その全部が訪問として記録される。
これを外す仕組みはちゃんと用意されている。
自分の回線に割り当てられた番号を登録しておくと、そこから来た分は数えない、という設定だ。
やっと数字がまともになった、と思ったのだけれど、そのあとで別の落とし穴を踏んだ。
計測の部分を直したときに、自分でページを開いて動作を確かめても、当然ながら一件も記録されない。
直したはずなのに数字が動かないので、直し方を間違えたのかと半日ぐらい疑っていた。
外す設定は入れておいたほうがいい。
ただし「自分は数えられていない」ということを、確認する側の自分も覚えておかないといけない。
人でないものも、混ざって数えられている
訪ねてくるのは人だけではない。
検索エンジンの巡回役をはじめとして、機械が見にくる分がかなりある。
これはクローラーという司書の話で書いた、あの手の相手だ。
よく知られた巡回役は、解析の側であらかじめ除いてくれる。
ただ、除かれるのは名前が知られているものだけで、それ以外は素通りする。
最近は人のふりをして見にくるものも普通にいる。
数字が一日だけ跳ね上がっていたら、まず疑うのはそこだ。
僕の場合、跳ねた日の中身をよく見たら、同じページばかりを一分間に何十回も開いている記録が並んでいた。
人ではない、というのは見ればだいたい分かる。
それで、数字の見方を三つ変えた
ひとつめ。
合計より、変化の向きを見るようにした。
中身が「印の付いたブラウザの数」である以上、実際の人数として正しい保証はどこにもない。
同じ数え方で測り続けているぶん、増えているか減っているかだけは信用できる。
ふたつめ。
数え始める前に、外すものを先に決めるようにした。
自分の分を後から引き算するのは無理だ。
先に決めておかないと、その期間の数字はずっと使えないままになる。
みっつめ。
日ではなく週で見るようにした。
一日単位だと、自分の作業や機械の巡回みたいな小さいものに簡単に振り回される。
数字が読めるようになったというより、その数字が何を数えているのかをようやく知った、というほうが近い。
見ていたのは人ではなかった。
ブラウザに置いた印を数えた結果を、僕が勝手に人だと思って読んでいた。
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