どの政策を選んでも、2050年の日本はあまり変わらなかった
10個のプリセットを並べて、2050年度の実質GDPを印刷した。
その表を見て、このシミュレーターが何を見せる道具なのかが決まった。
日本経済シミュレーターをつくる第7回 / 全9回目次
モデルが落ち着いたので、用意したプリセットを全部回して並べてみた。
25本のスライダーを、それぞれの方向に目一杯振った10通りの日本だ。
2050年度の実質GDPを兆円で並べると、こうなった。
現状維持 708
積極財政 715
財政再建 685
消費税ゼロ 684
金融引き締め 688
食料品1%減税 706
高福祉・高負担 858
人口回復に賭ける 886
成長戦略 1167
世界不況+資源高 449上から6つが、684から715のあいだに固まっている。
幅にして4%だ。
税も金利も、経済の大きさをほとんど動かさない
消費税をゼロにしても、15%にしても、日銀が金利を3.5%に張り付けても、24年後のGDPは4%しか変わらない。
振り切ったつもりのレバーが、ほとんど何もしていないように見える。
飛び離れているのは3つだけだった。
成長戦略が1167兆円。人口回復が886兆円。高福祉・高負担が858兆円。
そして下に、世界不況と資源高が重なった449兆円。
この4つに共通しているのは、需要をどう配るかではなく、作れる量そのものを変えていることだ。
働く人の数、生産性、そして外から来る衝撃。
最初はモデルの感度が鈍いのを疑った。
でも係数を見直しても、この構図は変わらなかった。
考えてみれば、24年という時間の中では、税や金利は需要をならす道具でしかない。
作れる量を変えるのは、人と技術のほうだ。
それでも政策に意味が無いわけではない
同じ表で、借金の対GDP比を並べると景色が変わる。
財政再建 110%
成長戦略 188%
現状維持 253%
消費税ゼロ 455%
積極財政 542%
世界不況+資源高 1913%GDPが4%しか違わない政策どうしで、借金は5倍違う。
実質の手取りも、403万円から697万円まで開く。
政策が決めているのは「経済がどれだけ大きくなるか」ではなく、
「その経済を誰がどう負担して、どこにつけを回すか」のほうだった。
この表が、そのままトップの絵になった
紹介ページのいちばん上に、2026年の一点から2050年へ5本の線が扇のように開く図を置いた。
線の終わりの高さは、いま書いた実測値をそのまま使っている。
だから真ん中の3本はほとんど重なっている。
見栄えとしては、もっと派手に分かれてくれたほうが良かったと思う。
でも、重なっていることこそがこの模型の答えなので、そのまま置いた。
図の下にはこう書いた。
税や金利をどう動かしても、2050年の経済の大きさはそれほど変わりません。大きく動くのは、生産性と働き手に手を入れたときと、外から殴られたときだけ。
予測ではない、ということ
最後に、これだけは書いておきたい。
出発点の数字は本物だ。
名目GDP686兆円も、借金の対GDP比232%も、総人口1億2268万人も、出生率1.14も、全部が公表されている実績と予算そのままで、それらしい数字は1つも置いていない。
そこから先は模型が動かしている。
需要と物価と金利と財政と人口のあいだにある関係を、係数で書いたものだ。
20年後のGDPを当てにいく道具ではない。
分配も見ていない。格差も、産業ごとの違いも、地域差も入っていない。
ある日突然、国債が売れなくなるような展開も起きない。
それでも、スライダーを1本動かすと20個の数字が同時に動くところは、たぶん見る値打ちがあると思う。
消費税を上げれば借金は軽くなり、そのぶん暮らしは苦しくなる。
金利を上げれば物価は落ち着き、10年後に利払費が牙を剥く。
子育て支援は効くが、効くのは20年後だ。
どれかを良くすれば、必ずどれかが悪くなる。
それを言葉ではなく数字で受け取ってもらうために作った道具なので、正解は出ないようにしてある。
どれを我慢するかを、自分で決めてもらうだけだ。
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