包丁 鋼とステンレスの違いは手入れの手間|地アジを触った日だけ包丁が黒くなった理由
地アジを三枚におろした日だけ、包丁の刃が黒くなっていた。
同じ包丁で野菜を切った日は何も起きない。
魚を触った日だけ色が変わる、というのを最初に見たとき、切れ味とは別の話だと気づいた。
地アジを三枚におろした日だけ、包丁の刃が黒くなっていた。
タオルで拭いても落ちず、翌朝には点々とした染みになっている。
同じ包丁で野菜を切った日は何も起きない。
魚を触った日だけ色が変わる、というのを最初に見たとき、切れ味とは別の話だと気づいた。
黒くなるのは、鋼が魚と反応しているから
仕事で使っていたのは鋼の包丁だった。
鋼は空気中の酸素や、魚の血合い・脂に含まれる成分と反応しやすく、触れた面がすぐに変色する。
切れ味そのものは驚くほど良い。
研いだ直後の刺身は、断面がぬるりと吸いつくような手応えで切れる。
そのかわり、使ったらその日のうちに洗って水気を拭き、油を薄く塗ってから仕舞う、という手入れが要る。
怠けると染みどころか本当に錆びる。
ステンレスは、その反応が起きにくい
鋼にクロムなどを混ぜて錆びにくくしたのがステンレスの包丁で、魚を切っても黒ずみにくく、洗って乾かすだけでしばらく置いておける。
家庭用の包丁の多くがステンレスなのは、この手間の少なさが理由になっている。
研ぎの手応えは鋼より少し硬く感じるが、以前書いた研ぎ方(/meshi/531/)と同じやり方で十分に切れる刃は付く。
鋼ほど繊細ではないぶん、多少雑に扱っても機嫌を損ねない、という言い方もできる。
キャンプに持っていくなら、僕はステンレスを選ぶ
店では鋼を使っていたが、外に持ち出す一本を選ぶならステンレスにしている。
理由は単純で、現地では鋼の手入れをする時間も水も限られているからだった。
洗い場が混んでいて、拭いて油を塗る余裕がない日もある。
そのまま濡れた状態でクーラーバッグに戻すことも珍しくない。
鋼だったら翌朝には確実に錆びが浮いている状況で、ステンレスならまだ猶予がある。
家で丁寧に使う一本と、外で雑に使われる一本は、材質から分けたほうが道具にも自分にも優しい。
見分け方は、刃元の刻印と値段の傾向
店頭で迷ったときに見ているのは、刃元に刻印された鋼材の名前と、価格帯のおおよその傾向だった。
「ステンレス」「モリブデン」「VG」から始まる刻印はステンレス系のことが多く、「白紙」「青紙」「安来鋼」といった名前は鋼のことが多い。
同じサイズなら鋼のほうが安く、そのぶん手入れの手間が価格に含まれていないとも言える。
迷ったら店員に「これは錆びますか」とだけ聞けば、たいてい正直に教えてくれる。
結局、どちらが優れているという話ではなかった
鋼のほうが切れる、ステンレスのほうが楽、という単純な優劣ではなく、どれだけ手入れに時間をかけられる場所で使うかの話だった。
店の厨房は毎日必ず手入れができる場所だから鋼が合っていて、キャンプ場は手入れが後回しになりがちな場所だからステンレスが合っている。
道具の材質は、料理の腕前より先に、使う場所を見て選んだほうがいい。
調理まわりの道具はこちらにもまとめている。