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修正正弦波とは|正弦波インバーターとの違いと、炊飯器が唸る・止まる理由は波形

安い車用インバーターに炊飯器を繋ぐと、唸り音を立てて加熱が止まることがある。
原因として疑うのは電気の量ではなく、波形だ。修正正弦波とは何かを資料に沿って整理した。

安い車用インバーターに炊飯器を繋ぐと、「ブーン」と低く唸って、途中でエラーを出して止まることがある。
W数は足りているのに、家のコンセントでは起きないことが起きる。
原因として疑うのは、電気の量ではなく、電気の「波の形」だ。
この記事では、修正正弦波とは何か、正弦波との違い、どんな機器が困るのかを、資料に沿って整理する。

よくあるのは、1,000円台の車用インバーターを買って、シガーソケットに挿すだけというパターンだ。
値段とW数だけを見て選ぶと、波形の欄は見落としやすい。
テーブルタップの他の機器を外して炊飯器一台にしても症状が変わらないなら、容量ではなく電気の質を疑ったほうがいい。

インバーターは、電気の「形」まで作り直している

車のバッテリーは直流(DC)12V、家庭用の炊飯器やテレビが欲しがるのは交流(AC)100V。
インバーターはこの間に入って、直流を交流へ変換する箱だ。
電圧の数字を合わせるだけなら単純そうに聞こえるけど、実際にはもうひとつ、電気の「波の形」まで作り直さないといけない。

家庭のコンセントから来ている電気は、なめらかな曲線を描いて上下する「正弦波」という波形をしている。
日本中どこのコンセントでも、基本の形は同じだ。
直流から交流を作るとき、この曲線をそっくり再現しようとすると回路が複雑になる。
安いインバーターは、そこまでの回路を積んでいないことが多い。

修正正弦波とは|階段3段で正弦波に似せた波

車用インバーターの出力波形には、正弦波(純正弦波)のほかに「修正正弦波」と「矩形波」がある。

  • 正弦波 … 電圧が滑らかに上下する波。家庭のコンセントと同じ
  • 修正正弦波 … 階段状に電圧を切り替えて、正弦波に近づけた波
  • 矩形波 … 電圧が急に切り替わる、角張った波

Wikipediaの「Power inverter」の項目は、修正正弦波を「2つの方形波を、片方を周期の4分の1だけずらして足した波」と説明している。
できあがるのは、3段の階段状の波形だ。
同じ項目に、安価な民生用のインバーターの多くは、純正弦波ではなく修正正弦波を出す、と書かれている。

波形のゆがみの大きさは、THD(全高調波歪み率)という数字で比べられる。
同じ項目によると、3段の修正正弦波は、よくても約30%のTHDになる。
矩形波は約48.3%で、それよりは低い。
一方、系統(電力会社の送電網)につなぐ電源に求められる基準は、3%未満だと書かれている。
修正正弦波は、家庭のコンセントの電気と比べると、かなりゆがんだ波ということになる。

波形を正弦波に近づけるほど回路の部品が増え、値段も上がる。
逆に修正正弦波は回路が単純な分だけ安く作れるので、スマホやノートパソコンの充電を想定した安価な製品は、修正正弦波側に寄っていることが多い。
パッケージのおもてには「1,500W」のように出力だけが大きく書かれ、波形は裏の仕様欄に「修正正弦波」と小さく一行あるだけ、という製品も珍しくない。
値段とW数しか見ていないと、そこは読み飛ばしてしまう。

修正正弦波で動くもの、困るもの

修正正弦波でも、問題が出にくい機器と、出やすい機器がある。
Wikipediaの項目と、PHILE WEBのポータブル電源のコラム(2020年)を合わせて、整理する。

  • 動きやすい … 電気をそのまま熱や光に変える、抵抗性の負荷(電気ヒーター、白熱電球など)。PHILE WEBは、ホットプレートのような構造が比較的単純な小型家電も問題ない、としている
  • 困りやすい … マイコンで制御する機器(炊飯器、電子レンジなど)。PHILE WEBは、制御機能を持つ家電は誤作動を起こす可能性がある、と書いている
  • 困りやすい … モーターを使う機器。Wikipediaは、交流モーターの効率が約20%下がり、音がうるさくなることがあると書いている。PHILE WEBも、動作が不安定になることがあるとしている
  • 困りやすい … 調光できる照明。PHILE WEBは、波形の影響を受けやすいとしている
  • 困りやすい … パソコンやテレビなどの精密な電子機器。PHILE WEBは、正弦波以外での使用は避けるべきとしている
  • 電源トランスを積んだ機器 … Wikipediaは、トランスの余裕が少ないと、過熱する場合があると書いている

ACアダプターについては、資料で評価が分かれている。
Wikipediaは、スイッチング電源は修正正弦波でも、ほぼ問題なく動くと書いている。
PHILE WEBは、ACアダプターはスイッチングノイズによる不具合が起きることがある、としている。
どちらが当たるかは、アダプターの作りと、インバーターの品質によるのだと思う。
ノートパソコンのACアダプターを繋ぐ場合も、「たぶん動く」ではなく、製品の取扱説明書で確かめたほうが安全だ。

炊飯器が唸る・止まる理由を、僕はこう読んでいる

炊飯器は、内釜の温度をマイコンが見ながら、火力を上げ下げする仕組みのものが多い。
ここに、本来の正弦波と違う形の電気が来ると、制御が狂う可能性がある。
PHILE WEBが「マイコン制御の炊飯器や電子レンジは、誤作動を起こす可能性がある」と書いているのは、こういう状況だと思う。
ただし、炊飯器の機種ごとに、どこまで耐えられるかは違う。
同じ修正正弦波のインバーターでも、動く機種と動かない機種があるだろう。

同じインバーターでも、単純な発熱だけの機器なら問題なく動くことが多い。
同じ「安いインバーター」でも、繋ぐ相手によって結果がまったく違う。

「ブーン」という音の正体は、高調波ではないか

唸り音の理由として、よく挙げられるのは「高調波」だ。
修正正弦波は正弦波を階段状に近似しているので、本来の周波数(50Hzや60Hz)の整数倍にあたる、余分な周波数成分を含んでいる。
3倍なら第3次高調波、5倍なら第5次高調波と呼ぶ。

Wikipediaの項目も、高調波によって機器が効率の悪い動きになり、唸るような音(ハム音)が出ることがある、と書いている。
炊飯器の唸りも、この高調波がモーターやトランスのような部品に流れ込んでいるのだろう、というのが僕の推測だ。
ただし、どの部品が鳴っているのかを、僕自身が確かめたわけではない。

唸ったら、まず電源を切る

炊飯器を修正正弦波のインバーターに繋いで、唸り音やエラーが出たら、次の順で対応するのがよいと思う。

  1. すぐに電源を切り、コンセントを抜く。唸ったまま加熱を続けさせない
  2. インバーターの仕様欄で、出力波形を確認する。「正弦波」「純正弦波」か、「修正正弦波」「疑似正弦波」か
  3. 炊飯器の取扱説明書に、インバーターやポータブル電源に関する注意が書いていないかを見る
  4. 修正正弦波だった場合は、その組み合わせで炊飯器を使うのをやめる。無理に使い続けると、機器が壊れる可能性がある、と資料も警告している

波形の確認は、使う前にやっておくのがいちばん安い。
仕様欄を見るのに、お金はかからない。

買う前に、レビューの低評価と対応機種の欄を読む

安いインバーターのレビュー欄は、星の平均だけ見ると高評価が並んでいることが多い。
下のほうまで読むと、「炊飯器を繋いだら異音がした」「電子レンジが数分で止まった」という声が混ざっていることがある。
書いた本人が、原因が波形だと気づいていないことも多いと思う。

製品ページの対応機種の欄に「白熱電球・扇風機・ドライヤーなど」とだけ書かれていたら、炊飯器や電子レンジは想定に入っていないと読んでいい。
メーカー側は、最初から線を引いていることが多い。

電気毛布も、温度をマイコンで細かく制御するタイプなら、修正正弦波だと温まり方がおかしくなる可能性がある。
症状は違っても、根っこは同じ波形の問題だと考えられる。

正弦波出力のポータブル電源なら、家に近い電気が来る

ポータブル電源のAC出力は、正弦波のものが多い。
製品によって違うので、大容量のポータブル電源を見るときも、仕様欄に「正弦波」と書かれているかを確かめたい。
正弦波なら、炊飯器からすれば、キャンプ場でも自宅でも「いつもに近い電気」が来ることになる。

値段だけを見ればインバーターの何倍もするけれど、そこで買っているのは容量の大きさだけではなく、波形そのものだと僕は思う。
波形という項目は、値札にもレビューにもほとんど出てこない。
知らなければ、比べようがない項目だ。

買う前に見ておきたい3つ

電源まわりの製品を選ぶときは、次の3つを確認しておきたい。

ひとつ、パッケージや商品ページに「正弦波」または「純正弦波」とはっきり書いてあるか。
「修正正弦波」「疑似正弦波」としか書いていない製品は、マイコン制御の精密機器には使わない前提で選ぶ。

ふたつ、持っていく家電がマイコンで温度や動作を細かく制御しているタイプかどうか。
炊飯器・電子レンジ・薄型テレビ・調光器のたぐいは正弦波側、単純な熱源やUSB充電だけなら安いインバーターのままでいい、と役割を分けて持っていけばいい。
一台で全部をまかなおうとせず、用途で電源を分ける考え方だ。

みっつ、定格W数と瞬間最大W数の欄を両方見る。
炊飯器やケトルは立ち上がりの一瞬だけ定格の何倍もの電力を欲しがることがあり、瞬間最大が低いインバーターだと、波形以前にそこで落ちることもある。

炊飯器の唸り音は、機械が壊れる一歩手前の合図かもしれない。
キャンプ場で何かを温めるときは、コンセントの向こう側にある電気の形まで、少しだけ気にしてみてほしい。

出典

まる子パパ

まる子パパ

会社員。受託開発のエンジニアを15年以上続けていて、その前は寿司職人・長距離運転手・農業。 技術ブログは、キャンプの合間に踏んだバグと、AI・Web開発の運用の失敗を書いています。 このサイト自体が、開発に携わっているCMS「コンテナ」の稼働中の実例です。 このサイトについて / 小さな自動化の相談

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