人生ゲームから乱数を捨てた

22歳から65歳までを1年ずつ進めるモードを作った。
ランダムイベントを入れようとして、途中でやめた。

手取りの診断ができるようになったあと、もう一つのモードを作った。
22歳で就職して、65歳まで1年ずつ進む。転職、結婚、出産、住宅購入、独立、定年。選ぶたびにその年の手取りが計算される。

作りはじめた当初は、当然のようにランダムイベントを考えていた。
病気になる、リストラに遭う、思わぬ臨時収入が入る。人生ゲームなのだから、運の要素があったほうが面白いはずだ。

運があると、学びが逃げていく

試しに実装してみて、すぐに違和感が出た。

結果が悪かったとき、プレイヤーは「運が悪かった」で片づけられてしまう。
独立を選んだから厚生年金が止まったのか、たまたま病気を引いたから資産が減ったのか、区別がつかない。

このモードで見せたかったのは、選択と結果の因果だった。
会社員を続けた人とフリーランスになった人で、65歳の年金額が倍近く違う。それを自分の数字で確かめてほしかった。
間に運が挟まると、その線がぼやける。

乱数を全部外した。同じ選択をすれば、何度やっても同じ結果になる。
遊びとしての驚きは減ったが、道具としては正しくなったと思う。

資産がマイナス3,200万円になった

44年ぶんを自動で流すテストを書いて、4つの進路それぞれで通してみた。
フリーランスを選んだケースで、65歳時点の資産が−3,203万円になった。

原因は生活費だった。結婚して子どもが生まれて家を買って親に仕送りを始めると、年間の支出が500万円になる。
一方でフリーランスの手取りは410万円ほど。毎年90万円ずつ足りない計算だ。

数字としては正しい。国民健康保険と国民年金は重く、労使折半も無いのだから、そうなる。
でもゲームとしては破綻していた。誰も38年間、赤字を垂れ流しながら暮らしはしない。

人は収入が減れば支出も減らす。そこをモデルに入れていなかった。
手取りが生活費に届かない年は暮らしを切り詰める、という処理を足した。ただし切り詰めた年は満足度が下がる。

お金だけを最大化するゲームにしたくなかったので、満足度という指標を最初から持たせてある。
昇進を断れば満足度が上がり、収入は増えない。どちらを選ぶかはプレイヤーが決めればいい。

解説カードは、起きたあとに出す

このモードの本体は、実は制度の解説カードのほうだ。全部で24枚ある。

最初は制度の一覧として先に見せることも考えたが、やめた。
40歳になって手取りが減った直後に「介護保険料が始まりました」と出すほうが、間違いなく頭に残る。

だからカードは必ず、その出来事が起きたあとに出るようにした。
育休を取ったら保険料免除の話、家を買ったら住宅ローン控除の話、独立したら労使折半が無くなる話。
順番を守るだけで、同じ文章でも読まれ方が変わる。

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