無派閥のまま総理になれるか
大臣も党首も、サイコロ1つで決まっていた。
派閥と党首選を入れたら、遠回りの意味が変わった。
遊んでくれている人から、要望のリストが届いた。
党の部会、各委員会、議連、党役員、大臣政務官、副大臣、大臣、衆参議長、内閣総理大臣。党首選。党員と支援者と支援団体。政治献金。党費。
並べて眺めて、なるほどと思った。この人は議員になってからの話を求めている。
私が作ってきたのは選挙のゲームで、当落が決まったところで一区切りついていた。だが政治家にとって、選挙は入り口にすぎない。中に入ってから何が起きるのかが、まるごと薄かった。
4段しかない階段
それまでのポストは4段だった。部会長級、党三役、閣僚、党首。
実際の政界はこうなっていない。当選2回で大臣政務官、3回で副大臣、そこから大臣へ——政府の側の階段がまるごと抜けていた。衆参の議長も無い。
7段に組み直した。部会長級、大臣政務官、副大臣、閣僚、党三役、議長、党首。
政務官から大臣へ上がるのが政府のルート、部会長から三役へ上がるのが党のルート。1本の階段にまとめてはいるが、与党でなければ政府の役職は回ってこないという条件で、実際の分かれ方を表している。
段を足したら、別のところが壊れかけた。
任期中の行動——法案を出す、質問に立つ——の効き目が、ポストの段位を直接掛け算していた。4段のつもりで置いた係数に7を掛けたので、党首の法案がほぼ確実に通るようになってしまった。
段位をそのまま外に出すのをやめて、0から1に正規化した値だけを渡すことにした。
これから段が増えても、他所の係数を触らずに済む。内部の目盛りを外に晒すと、目盛りを増やせなくなる——よくある話だが、自分でやると毎回新鮮に痛い。
政権交代で、大臣が大臣のままだった
段を組み替えたあと、テストが1本落ちた。閣僚を務めている議員が野党に転じても、閣僚のままになっている。
原因は判定の書き方だった。降格するかどうかを「今の段位より、狙える最上位の段位が下か」で見ていた。
4段のうちは正しかった。だが党三役を閣僚の上に置いたので、政権交代した議員は「閣僚(4段目)を失うが党三役(5段目)には届く」という状態になる。段位で比べると上がっているので、降格の分岐に入らない。
正しい問いは「今のポストの要件を、まだ満たしているか」だった。段位の比較ではない。
書き換えたら、政権交代のときだけ出る文章も足せた。「政権が代わり、閣僚の職を離れた。これからは党三役として、政権を追及する側にまわる」。
順序を1本の数直線に潰すと、こういう見落としが生まれる。順序が本当に1本かどうかは、疑ったほうがいい。
派閥は、党の中にあるもう一つの党
ポストの階段を作ると、次の問いが出てくる。誰が椅子を配るのか。
それまでは乱数だった。要件を満たしていれば、確率で就ける。
だが現実に椅子を配っているのは、党内に束ねられた議員の数だ。ここに派閥が要る。
政党ごとに3〜4つ、党名から決定論的に組み立てるようにした。明和会、碧水会、暁風会——実在の派閥名は使わず、響きだけを借りている。
大きさの合計は党全体の8割にしてある。残り2割は無派閥の議員がいるぶんだ。最大派閥でも3分の1を超えないようにしたのは、単独で党を動かせる派閥があると党内政治が一本道になってしまうから。
どこから声がかかるかは、派閥の大きさと自分の立ち位置で決まる。防衛を重んじる人には強硬派の集まりから、対話を重んじる人には穏健派から。
派閥に入ると、大臣や党三役の椅子が回ってきやすくなり、公認争いでも効く。公認を決める場に、自分の代わりに座ってくれる人がいるということだ。重みは「現職であること」と同じくらいにした。
議員票と党員票
党首の椅子だけは、確率で配りたくなかった。あれは投票で決まるものだ。しかも票が二種類ある。
議員票と党員票。この二つが食い違うことが、党首選をおもしろくしている。
派閥を固めた候補が議員票で勝ち、世間で人気のある候補が党員票で勝つ。過半数に届かなければ決選投票になり、そこでは党員票が各都道府県連の1票ずつ(47票)に圧縮されて、議員票がほぼすべてを決める。
「党員票では勝ったのに、決選投票で逆転された」という結末は、この仕組みからしか生まれない。
実装してみると、開票の表を出すだけで空気が変わった。自分の名前の横に「北辰会」と派閥名が並び、対立候補が3人。議員票160・党員票160で首位、それでも過半数に届かず決選投票へ。
最後に、無派閥のまま党首になれるかを確かめた。
結果は「知名度さえあれば勝つ目はある。ただし遠回りになる」。テストにもそう書いた。派閥に入らずに総理になった人は実際にいるので、そこを塞いでしまうのは違うと思った。
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