地盤の選挙区が、地図から消えた
10年ごとに区割りは変わる。
自分では一票も動かせないのに、足元だけが崩れていく。
候補者モードで選挙区を選ぶとき、その区の勢力(前回の比例得票)は出るようにしてあった。立国39.1%、民自24.0%、というふうに。
現在地は分かる。だが、そこに至る道のりが見えない。
同じ「自民系40%」でも、13回連続で守ってきた40%と、前回ようやく奪い返した40%では、乗り込むときの覚悟がまるで違う。
民主党を、数から外していた
取り込み済みの13回ぶんの比例得票から、県ごとに「誰が1位だったか」を数えることにした。
古い党名を今の系統にまとめ直す表は、既に持っている。それを流用して集計し、出てきた数字を見て手が止まった。
東京都、自民系13回中13回で1位。
違う。2009年の総選挙で東京の比例1位は民主党だ。
理由はすぐ分かった。その対応表は「今ある政党の地域的な支持がどこから来ているか」を表すために作ったもので、消滅した民主党・民進党をどの現存政党にも寄せていない。意図的にそうしてある。立憲と国民に分かれた2党のどちらかに寄せると、地域係数が歪むからだ。
だが「その土地で誰が勝ってきたか」を数えるなら話は別だ。第1党だった党を数から外せば、政権交代のあった回まで自民党が勝ったことになってしまう。
系譜のためだけに、民主党系を独立した系統として立てた。
入れ直したら、東京は自民系10回・民主系3回、1位の入れ替わりは1回。第21回参院選から第22回参院選まで民主系が3回続き、2012年に自民系へ替わって、そこから動いていない。事実のとおりだ。
同じデータでも、何を数えるかで正しい前処理は変わる。 使い回すときは、その前処理が何のためのものだったかを読み直したほうがいい。
大阪は9回、沖縄は6.8ポイント
集計が正しくなると、土地の性格が数字で言えるようになった。
大阪は維新系が13回中9回で1位。2012年以降はほぼ独占していて、割り込んだのは2017年の1回だけ。
沖縄は自民系が11回で1位だが、2位との差は平均6.8ポイントしかない。1位が3回入れ替わっている。
東京は差が11.6ポイントで、入れ替わりは1回だけ。
この3つの数字——勝ち続けているか、差が大きいか、入れ替わったか——から名前を付けた。「保守王国」「激戦の土地」「風で動く土地」。
13回ぶんの勝者を古い順に横へ並べて、色の帯として見せている。民主系が3つ続いて自民系に切り替わる並びは、それだけで2009年の話をしている。
後援会員2万937人
もう一つ、要望に「党員・個人の支援者・支援団体の見える化」「政治献金」「党費」があった。
このゲームのパラメータは0から100の抽象値だ。「地盤62」と言われても、それがどれくらいの規模なのかは伝わらない。
だが政治家にとって地盤とは、後援会の名簿であり、集会に来てくれる人の数であり、推薦状をくれる団体の数のことだろう。
翻訳の層を1枚かぶせた。後援会員2万937人、集めた党員・党友5,794人、推薦団体21。
そして政治資金収支報告書。個人献金710万円、企業・団体献金1,139万円、パーティー849万円、政党交付金2,786万円。支出は人件費2,610万円、事務所費1,452万円、政治活動費665万円、党費260万円。収支は497万円。
金額の構成比が、その政治家がどこを向いているかを表している。個人献金で回っている議員と、団体献金とパーティーで回っている議員では、同じ金額でも意味が違う。
秘書と事務所だけで収入の大半が消えるのも、見せておきたかったことだ。政治にはこれだけかかる。
大事にしたのは、新しい状態を1つも持たせないことだった。全部が既存のパラメータからの派生値で、ゲームの計算には一切影響しない。見せるためだけの層として切り離してある。
こうしておけば、数字が変わるのは地盤や資金が実際に動いたときだけになる。表示のためのデータが独自に育ちはじめると、あとで必ず食い違う。
10年後、区が消える
最後に、いちばん気が重い機能を入れた。区割りの改定だ。
小選挙区の区割りは、国勢調査のたびに見直される。2022年の改定ではアダムズ方式が導入され、東京が5増える一方で、10の県が1つずつ議席を失った。
議席が減る県では、どこかの選挙区が必ず消える。そこを地盤にしていた議員は、隣の区へ移るか、比例に回るか、引退するかを選ぶことになる。
衆議院のキャリアを10年続けると、これがめぐってくるようにした。増減の内訳は2022年の実際の数字をそのまま使っている。
広島の第6区を地盤にして遊んでみたら、こう出た。
「区割りの改定で、県の定数が6から5に減った。自分が地盤にしてきた第6区は分割され、地図の上から消えた。第5区へ移って戦うことになるが、これまで積み上げてきた名簿の多くは、別の区の側に残る」
地盤マイナス18。8回の当選をかけて積み上げた88が、70になった。
割り切ったところも書いておく。改定が起きても、全国289区の地図そのものは組み替えていない。動かしているのはプレイヤーの立ち位置と地盤だけだ。
全国の区割りを引き直すと、地域係数も区ごとの支持率も比例ブロックの定数も作り直しになり、実績から組み立てた土台が使えなくなる。「自分の足元が変わる」という体験だけを取り出した、と読んでほしい。
それでも、この一報が出た瞬間の感じは本物だった。
選挙にも負けていない。何も間違えていない。それなのに、次の選挙は今までより不利な場所から始まる。政治家にとっての区割り改定は、たぶんそういうものなのだと思う。
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