手取りを削っていたのは、税金ではなかった

年収500万円の内訳を計算し終えて、数字を並べたときに手が止まった。
税より社会保険料のほうが、倍以上あった。

計算エンジンが一通り動くようになって、最初のテストケースを流してみた。
年収500万円、東京都、独身、40歳未満。いちばん平凡な会社員を想定した数字だ。

出てきた内訳がこれだった。

  • 社会保険料 745,852円
  • 所得税    90,500円
  • 住民税   240,900円
  • 手取り 3,922,748円

税を足しても33万円。社会保険料は75万円。倍以上ある。
「税金が高い」という話はよく聞くけれど、給与から抜けていく額でいえば主役は明らかに社会保険料のほうだった。

しかも会社が同じ額を払っている

健康保険も厚生年金も労使折半なので、会社側も同じ75万円を負担している。
合わせて150万円。年収500万円の人を雇うのに、社会保険だけで1.5割が上乗せされている計算になる。

この数字を見てから、ツールの結果画面で社会保険料をいちばん目立つ位置に置くことにした。
税の内訳を細かく出すより、まず「引かれている額の主役はこっち」と分かるほうが先だと思った。

等級表を実装して、はじめて実額に届いた

社会保険料の計算でつまずいたのが標準報酬月額だった。
最初は素直に「月給×料率」で計算していたが、それだと給与明細と数百円ずれる。

実際の保険料は、報酬月額を50段階(厚生年金は32段階)の等級表に当てはめて、その等級の標準報酬月額に料率を掛けて決まる。
月給333,333円なら標準報酬月額は340,000円。実際より6,667円多い額を基準に保険料が計算されている。

等級表を全部データとして持たせて、報酬月額から等級を引く関数を書いた。
賞与も別扱いで、1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に料率を掛ける。健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1回あたり150万円で頭打ちになる。

ここまで実装して、ようやく手元の給与明細と一致した。
「だいたい合っている」で止めていたら、このツールを誰かに見せる気にはなれなかったと思う。

控除がまったく効かない

もう一つ、実装していて気づいたことがある。社会保険料には控除という概念がほとんど無い。

所得税なら、扶養が増えれば控除が増えて税が減る。生命保険に入っても、医療費がかさんでも、その分だけ課税所得が下がる。
ところが社会保険料は報酬の額だけで決まる。子どもが3人いようと、住宅ローンを抱えていようと、1円も変わらない。

だからこのツールで「手取りを増やす方法」を出すとき、税を下げる施策と社会保険料まで下げる施策を区別して表示することにした。
iDeCoは税を下げるが社会保険料は下げない。青色申告特別控除は所得そのものを減らすので、国民健康保険料まで一緒に下がる。
この違いは、効果額を並べただけでは伝わらない。

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