「基礎控除は58万円」と書いた翌日に、それが間違いだと知った
手取りを計算するツールを作りはじめて、最初に書いたのが控除の定数だった。
数字は頭に入っている。そう思って書いたものが、まるごと古かった。
年収を入れると手取りが出るツールを作ろうと思い立って、最初に手を付けたのが制度の定数ファイルだった。
所得税の速算表、給与所得控除の区分、基礎控除の額。このあたりは何度も調べたことがあるので、手が勝手に動く。
基礎控除は58万円。給与所得控除の最低保障は65万円。合わせて123万円……ではなく、令和7年の改正で壁は160万円になったはずだ。
そこまで思い出しながら書いて、念のため裏を取ろうとした。それが分かれ目だった。
解説記事を3本読んで、数字が合わなかった
検索して出てきた記事を開くと、そこには「令和8年度改正で基礎控除が62万円に」と書いてあった。
別の記事には「489万円以下は一律42万円の加算」とある。もう1本には「489万円超665万円以下は5万円」。
665万円。私の記憶では655万円だ。10万円ずれている。
どちらかが誤植なのか、それとも改正で境目そのものが動いたのか、記事を読み比べても判断がつかなかった。
税額に直結する数字で、10万円の境目を間違えるわけにはいかない。
腹をくくって、財務省が公開している税制改正の大綱を直接開いた。
大綱には、こう書いてあった
PDFを落としてテキストに起こし、「基礎控除」で検索する。該当箇所はすぐ見つかった。
(4)令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例
① 居住者のその年分の合計所得金額が655 万円(令和10 年分以後の各年分にあっては、132 万円)以下である場合の基礎控除の控除額の加算額を次に掲げる年分の区分に応じそれぞれ次に定める金額とする。
655万円だった。記事のほうが誤っていた。
そして本則の額も確認できた。合計所得2,350万円以下は62万円。ここに特例の加算が乗って、489万円以下なら104万円になる。
給与所得控除の最低保障も、本則69万円に令和8年・9年分だけ5万円が乗って74万円。
足すと178万円。これがいまの「年収の壁」だ。
知っているつもりが、いちばん危ない
もし裏を取らずに書き進めていたら、基礎控除が46万円ぶん少ないまま全ケースを計算していたことになる。
年収500万円の人で、所得税と住民税を合わせて7万円ほど多く見積もってしまう。
「なんとなく合っている数字」がいちばん見つけにくい。明らかに壊れていれば気づけるが、それらしい額が出てしまうと最後まで気づけない。
この一件以来、制度の数字はすべて一次資料で確認して、定数のそばに出典URLと確認日をコメントで残すことにした。
来年また改正が入ったとき、どこを見に行けばいいかが分かるようにしておきたかった。
ついでに、四半期ごとに制度が変わっていないかを自動で確認する仕組みも入れた。
税は毎年どこかが動く。作ったときに正しくても、放っておけば1年で嘘つきになる。
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