参議院が、一度も登場していなかった

法案は衆議院の過半数だけで決まっていた。
憲法59条も60条も、実装済みのまま使われていなかった。

点検を続けていて、もう一つ大きいものが出てきた。

rules/diet.ts という373行のファイルがある。憲法と国会法を素直にモデル化したもので、テストも書いてある。
そこから実際に使われている関数を数えたら、2つだけだった。

実装済みで、呼ばれていなかったもの

使われていなかったのは、こういう顔ぶれだ。

  • 内閣総理大臣の指名(憲法67条。両院の議決・両院協議会・10日ルール)
  • 法律案の再可決(59条2項。参議院が否決したときの、衆議院の3分の2)
  • 予算の自然成立(60条2項。参議院が否決しても衆議院の議決が国会の議決になる)
  • 内閣の文民統制の検証(66条)、憲法改正の発議(96条)

最初の1つには自分でも驚いた。前回、首班指名を新しく書いたばかりだった。
幸い役割は重複していない——あちらは「両院の議決が出たあと、どちらが国会の議決になるか」で、私が書いたのは「衆議院の中で誰が指名されるか」だ。だが、あることを知っていれば繋げられたはずだった。

法案は、衆議院の過半数だけで決まっていた

もっと効いていたのは59条と60条のほうだ。

政権運営の法案処理を読み返すと、衆議院の賛成が過半数を超えたら成立、超えなければ否決。それだけだった。
参議院が一度も登場しない。 つまり、ねじれ国会という状態がこのゲームには存在していなかった。

参議院を持たせることにした。3年ごとに半数を改選するので、いまの248議席は2回の通常選挙の積み重ねでできている。しかもどちらも総選挙とは別の時期だ。
だから独立した参院選を2回引いて足し合わせる形にした。衆議院の結果から作らないのは、同じ風を2回吹かせてしまうと、そもそもねじれが起きなくなるからだ。

あとは既にある関数に渡すだけだった。衆議院を通った法案が参議院へ行き、そこで否決されたとき、

  • 法律案なら衆議院で出席議員の3分の2以上(310票)の再可決が要る。連立だけで揃うことはまずないので、たいてい廃案になる
  • 予算案なら衆議院の議決がそのまま国会の議決になる。再可決は要らない

実際に動かすと、記録にこう出た。
「安全保障関連法案が廃案 — 衆議院で可決された(賛成303・反対162)。参議院では与党が過半数を持たず、否決された。再可決に必要な310票に届かなかった(第五十九条第二項)」
「積極財政の予算案が成立 — 参議院では与党が過半数を持たず、否決された。衆議院の議決が国会の議決となった(第六十条第二項)」

同じ日に、同じ内閣が、片方は通して片方は落とす。この非対称がそのまま画面に出るようになった。

ついでに見つけた、法案が通らなすぎる問題

ねじれを入れて遊んでいたら、別のことに気づいた。235議席の連立で、法案が5回続けて否決された。

賛成224、225、227、228、230。必要なのは233。惜しいところで落ち続けている。

原因は造反の揺らぎだった。連立の議席に対して±14議席の幅で上下させていたので、過半数ぎりぎりの内閣では半分近くが否決になる。
コメントには「揺らぎが無いと、過半数なら常に可決・少数与党なら常に否決の決定論になる」と書いてあって、それは正しい。だが14議席は大きすぎた。日本の国会では党議拘束がかかるので、与党が過半数を持っていれば法案はまず通る。

上下対称に振るのをやめて、減る側と増える側を別々に扱うことにした。
減るのは造反・欠席で、党議拘束があるので小さい。増えるのは部分連合——法案の中身次第で野党の一部が賛成に回る。これは大きくなりうるが、毎回起きるわけではない。少数与党が法案を通せる唯一の道でもある。

測り直した可決率がこれ。

衆議院の議席可決率
300100%
260100%
23587%
22025%
2002%

過半数を持てばほぼ通り、割れば部分連合が成立したときだけ通る。狙いどおりになった。

点検してよかった

今回の点検で出てきたものを並べると、こうなる。

  • 政権交代が構造的に起きていなかった(風の設計)
  • ねじれ国会が存在しなかった(実装済みの条文が呼ばれていなかった)
  • 過半数の内閣で法案が通らなすぎた(揺らぎの幅)
  • 参議院の出馬画面にだけ、選挙区の勢力と系譜が無かった
  • 参議院のセーブデータに、新しい項目の既定値を足し忘れていた

最後の1つは、自分で残したメモに「項目を足したら衆参の両方に既定値を足すこと」と書いてあったのに、それでも踏んだ。
今回は参議院側が衆議院側の既定値をそのまま取り込む形にして、2か所に分かれていたこと自体を無くした。忘れないようにするより、忘れても壊れないようにするほうがいい。

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