まな板を買い足す前に、切る順番を変えたら荷物が減った
外で野菜を切ろうとすると、まな板が滑る。
洗いたいのに、水場は遠い。
困っていたのは切りにくさではなく、切ったあとのほうだった。
川沿いのキャンプ場で、テーブルに載せたまな板がつるつる滑って往生したことがある。
押さえながら切るから力が入らないし、切ったそばから野菜が転がって落ちる。
道具が悪いのだと思って、その日は帰りに大きくて重いまな板を買った。
いまはそれを持っていっていない。
外で困っていたのは切りにくさではなく、切ったあとのほうだったからだ。
外でいちばん困るのは、洗えないこと
寿司屋にいた頃は、まな板の横がそのまま流し台だった。
魚を一本おろしたら、その場で水を流して、布巾で拭いて、次の仕事に移れる。
まな板は道具というより、いつでもまっさらに戻せる作業台だった。
外はそこが違う。
水場は少し離れているし、混んでいる時間もあるし、洗剤を流せない場所もある。
拭くだけでは、生の肉や魚を切ったあとをきれいにしたことにはならない。
だから外のまな板は、一度使うたびに気を使う持ち物になる。
大きくて立派なものほど、その気疲れが増える。
僕が最初に買い足したものは、いちばん洗いにくいものだった。
道具を増やすかわりに、切る順番を決めた
やり方を変えたのは、店で当たり前にやっていたことを思い出したからだ。
洗い場に立てないときは、洗わなくて済む順に手をつける。
それだけで、まな板を何枚も持ち替えなくてよくなる。
順番はいつも同じにしている。
まず、そのまま食べる野菜から切る。
きゅうり、トマト、薬味のたぐいだ。
次に、火を通す野菜にいく。
玉ねぎ、にんじん、きのこ。
ここまでは、まな板を軽く拭いて続けても気にならない。
肉と魚は、いちばん最後に回す。
そこまで来たらもう切るものがないので、あとは片付けるだけになる。
逆からやると、そのあとに触るもの全部が洗い直しの対象になってしまう。
板そのものは、薄くて軽いものを二枚
木のまな板は、家で使うぶんにはいい。
ただ現地では乾かない。
一晩置いても中まで乾かないし、匂いを覚えるので、帰ってからの手間がむしろ増える。
いまは薄いシート状のものを二枚だけ持っている。
色を変えて、こちらは生もの用、と最初に決めてしまう。
決めておくと、暗くなってから迷わない。
薄いものは曲げられるので、切った野菜をそのまま鍋の上まで運んで流し込める。
包丁の背で寄せて手を添えて、という動作がいらない。
滑るほうは、下に濡らした布巾か紙を一枚敷けば止まる。
重さで解決しようとしていたのが、そもそも遠回りだった。
そして、家でやってきたほうが早いものがある
肉の下味と、魚の下処理は家で済ませてくる。
下味をつけて凍らせておけば、道中は保冷剤の役までしてくれる(肉は家で下味をつけて、凍らせてから積む)。
現地で刃を入れるのは、その場で切らないと味が変わってしまうものだけでいい。
薬味は切った瞬間から香りが飛んでいくから、火のそばで切る。
トマトや桃のように、切り口が乾くと惜しいものも現地で切る。
それ以外は、家の流し台の前にいるうちに終わらせておくほうが、味の面でも安全の面でも勝っている。
包丁を一本に減らした話も、たどれば同じところに出る(キャンプに持っていく包丁は、1本でいい)。
外の料理で決まっていないのは、道具の数ではなく、使える水の量のほうだ。
その量に合わせて仕事を割り振ると、荷物は勝手に軽くなる。
切るための道具はおすすめギアのほうにも並べているけれど、買い足す前に一度、順番だけ変えてみてほしい。
僕の場合は、それで大きなまな板が家の台所に戻った。