肉は家で下味をつけて、凍らせてから積む。ついでにいちばん強い保冷剤になる
現地でやることを減らしたくて始めたことだった。
気づいたら、クーラーボックスの中まで変わっていた。
夏に肉を持っていくとき、僕はもう当日の朝には買わない。
前の日のうちに買って、下味をつけて、凍らせてから積む。
面倒に聞こえるけれど、やることは袋に入れて揉むだけだ。
十分もかからない。
それで現地の段取りがまるごと楽になった。
凍らせた肉は、いちばん強い保冷剤になる
これに気づいたのは偶然だった。
前の晩に仕込んだ肉を凍ったまま入れて出かけたら、翌朝クーラーボックスの中がいつもより冷たかった。
考えてみれば当たり前の話で、凍った肉は溶けきるまで周りの熱を吸い続ける。
保冷剤をひとつ増やすのと同じことを、食べるものがやってくれている。
しかも保冷剤とちがって、最初から積むつもりだった荷物だ。
クーラーボックスの詰め方そのものは前に書いたとおりで、冷たいものは上に置くのが基本になる。
凍らせた肉は、その「上に置く冷たいもの」の役をそのまま引き受けてくれる。
保冷剤と氷の使い分けはこちらに書いた。
下味は、凍らせる前につける
肝心なのはここだと思う。
凍らせてから味をつけるのではなく、味をつけてから凍らせる。
凍る前の肉はまだ水分が動いていて、塩や味噌がしみ込む余地がある。
凍ったあと、現地でゆっくり解けていくあいだも味は入り続ける。
移動している時間が、そのまま仕込みの時間になる。
やっているのは三つくらい。
塩と胡椒だけのもの(塩は肉の重さの一パーセントを目安に)。
味噌と酒とみりんを同じ量ずつ混ぜたもの。
すりおろした玉ねぎと醤油。
味噌に漬けたものは焦げやすいので、焼くときは火から少し離す。
仕事では魚に塩を当てておく時間を分単位で見ていたけれど、キャンプの肉はそこまで神経質にならなくていい。
一晩置けるというだけで、家の台所より条件がいいくらいだ。
解ける順番を、こちらで決めておく
全部を同じ厚さで凍らせると、全部が同じころに解ける。
それだと初日に食べたいものがまだ硬くて、二日目のぶんはもう解けている。
だから初日の夜に食べるものだけ、袋に入れて平らにならしてから凍らせる。
薄いぶん早く解けるので、着くころには半分ほど戻っている。
二日目のぶんは塊のまま、厚いまま凍らせておく。
入れる場所も変えている。
早く使うものは上のほう、あとで使うものは底のほう。
底は開け閉めの影響を受けにくいので、そのぶん長く凍ったままでいてくれる。
焼くときに気をつけていること
凍ったまま焼くのだけは、やめたほうがいい。
外が焦げるころになっても中は凍ったままで、待っているうちに表面が硬くなる。
半分解けたくらいが、いちばん扱いやすい。
袋から出したときに水が出ていたら、拭いてから焼く。
あの水がついたまま火にかけると、焼くというより煮ることになって、焼き色がつかない。
拭くだけで仕上がりが変わるので、これは横着しないほうがいい。
それと、解けたものを凍らせ直さないこと。
味が落ちるという以前に、夏は温度が上がっている時間が長いほど分が悪い。
一度解けたものは、その日のうちに火を通してしまう。
調理まわりの道具はこちらにまとめてある。
下味をつけて凍らせる、というだけの話だ。
それでも現地の仕事はずいぶん減った。
着いてからやるのは、袋から出して焼くところだけになる。
火の前で慌てている時間より、火を見ている時間のほうが長くなった。