焚き火の鍋、野菜だけがいつも生煮えか、溶けているかのどちらかだった
肉はちょうどよく火が入るのに、野菜だけがいつも極端だった。
切り方のほうを疑っていなかった。
キャンプの鍋で、肉はちょうどいい火の通りなのに、野菜だけ端が溶けて芯が硬いということがよくあった。
火加減のせいだと思って、何度も弱めたり強めたりしていた。
実際は、切り方のほうに原因があった。
大きさより、いちばん厚いところを見る
仕事では「同じ大きさに切る」とよく言われるが、正確には「いちばん厚い部分をそろえる」のほうが近い。
にんじんを乱切りにすると、見た目の大きさは同じでも、角の薄いところと真ん中の厚いところで火の通る速さがまるで違う。
薄いところは煮えているのに、真ん中はまだ生、という状態は、これで起きる。
厚みをそろえるいちばん簡単な方法は、輪切りか半月切りにすることだと思う。
乱切りより見た目は地味だが、どこを切っても同じ厚みになるので、火の通り方を計算しやすい。
外で凝った切り方をする必要はない。
根菜と葉物は、鍋に入れる順番が別
じゃがいも・にんじん・ごぼうのような根菜は、火が通るまで時間がかかる。
キャベツや葉物は逆に、入れてすぐ柔らかくなる。
この二つを同じタイミングで鍋に入れると、片方が煮えたときにはもう片方が煮崩れている。
だから根菜は先、葉物はあと、という順番を守る。
先に入れる根菜は少し小さめに、あとに入れる葉物は大きめに切っておくと、鍋を火にかけている時間の差が自然と埋まる。
切り方と入れる順番は、セットで考えたほうがうまくいく。
皮をむくかどうかは、時間で決めている
にんじんもじゃがいもも、皮のすぐ下がいちばん硬い。
時間に余裕がある日は皮をむいて火の通りを早くするし、時間がない日はむかずに小さく切って対応する。
どちらが正解というより、その日の火力と持ち時間で決めればいい話だと思う。
玉ねぎだけは例外で、繊維の向きをそろえて切ると煮崩れにくくなる。
繊維を断ち切る向きに切ると早く柔らかくなる代わりに、形が崩れやすい。
甘みを残したいスープなら繊維に沿って、早く火を通したい炒め物なら繊維を断って、と切り方で使い分けている。
板場で最初に教わったのは、魚より野菜だった
仕事に入ったばかりの頃、最初にやらされたのは魚ではなく野菜の下ごしらえだった。
理由は考えたこともなかったが、いま思えば、切り方ひとつで火の通り方が変わることを体に覚えさせる工程だったんだと思う。
包丁の使い方より先に、厚みをそろえる感覚を仕込まれていた。
外で調理するときは、鍋の中の様子をずっと見ていられるわけではない。
火にかけたあと放っておいても、切り方さえそろっていれば、だいたい同じタイミングで火が通る。
その安心感のために、切る手間を惜しまないようにしている。
調理まわりの道具はこちらにまとめている。