この魚は生で食べられるか、火を通すべきか。現地で判断していた基準

道の駅で釣ったばかりの魚をもらって、刺身にしていいものか迷ったことがあった。
新鮮かどうかと、生で食べられるかどうかは、別の話だった。

キャンプ場の隣で釣りをしていた人から、釣れたばかりの魚をもらったことがある。
新鮮なのは間違いないのに、刺身にしていいものか、火を通すべきか迷った。
新鮮さと、生で食べられるかどうかは、じつは別の話だった。

新鮮でも、生に向かない魚がいる

職人だったころ、魚には大きく分けて刺身に向くものと、火を通す前提のものがあると教わった。
向き不向きを分けているのは、寄生虫や菌のリスクだ。
たとえばアニサキスという寄生虫は、サバやアジ、イワシのような青魚に多くつく。
どれだけ新鮮でも、目に見えない相手には勝てない。

プロの現場では、冷凍して寄生虫を死滅させてから提供するという工程を経ている魚も多い。
現地で釣ったばかりのものには、その工程がない。
新鮮さは「腐っていない」ことの証明であって、「安全に生で食べられる」ことの証明ではなかった。

見た目で判断していた三つのこと

それでも現地で、ある程度の見当をつける方法はある。
僕が見ているのは三つ。

一つ目は魚種。
青魚は基本的に火を通す前提にする。
タイやヒラメのような白身魚のほうが、寄生虫のリスクは比較的低いとされている。

二つ目は締め方。
釣り上げてすぐに血を抜いて締めてあるか、そのまま放置されていたか。
締めの有無で、鮮度の落ち方の速さがまったく違う。

三つ目は内臓の状態。
内臓を早めに抜いてあるかどうか。
内臓は魚の中でいちばん傷みやすく、寄生虫も内臓周りにいることが多い。
内臓が残ったまま時間が経った魚は、迷わず火を通す。

迷ったら、迷わず火を通す

現地には、内臓を確認する時間も設備もないことが多い。
判断に迷う要素が一つでもあれば、刺身は諦めて火を通す。
この線引きは、職人時代からずっと変わっていない。

火を通せば、ほとんどの寄生虫や菌のリスクはなくなる。
焚き火で魚を焼くときの黒焦げと生焼けの見分け方は前に書いた通りで、中心までしっかり火を通すことが、いちばんの安全策になる。

もらった魚は、素直に火を入れることにしている

あの日もらった魚も、結局は塩を振って焚き火で焼いた。
もったいないと思う人もいるかもしれないが、締め方も内臓の状態も分からない魚を、キャンプ場で無理に生食にするリスクは取らない。

刺身にできるかどうかは、新鮮さだけでは決まらない。
魚種、締め方、内臓の状態。
この三つが揃って初めて判断できることで、一つでも欠けたら、迷わず火の方を選んでいる。

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