出汁だけは家から持っていく。前の晩に水へ入れておくだけの話
外で作る味噌汁が、お湯に味噌を溶いた味になる。
足りないのは腕ではなく、出汁を用意する時間のほうだった。
外で作る汁物が、どうも間延びした味になる。
具は同じ、味噌も家から持ってきた同じもの。
それでも家の味噌汁とは別のものになる。
粉末の出汁を足せば形にはなるけれど、あの角のある塩気が最後まで残る。
寿司屋にいた頃に叩き込まれたのは、出汁は手間ではなく段取りだということだった。
外でこそ、その段取りが効く。
昆布は、水に入れておくだけで出る
火にかけなくてもいい。
水に浸けて置いておけば、昆布は勝手に出汁を出す。
出かける前の晩、空のペットボトルか水筒に水を入れ、はがきくらいの大きさに切った昆布を一枚落としておく。
水は500mlから1Lくらい、昆布はその量に対して10gが目安になる。
冷蔵庫で一晩置けば、翌朝には薄い黄金色になっている。
夏場に常温で置くのはやめたほうがいい。
水物になった時点で傷むものだと思って、保冷剤と一緒にクーラーへ入れて運ぶ。
煮出した出汁と違って、水出しは香りが軽くて澄んでいる。
朝の味噌汁には、むしろこちらのほうが合うと思う。
削り節は現地で、最後に
昆布の水出しを鍋に移して火にかける。
鍋の底から小さな泡が立ちはじめたら、そこで火を弱める。
煮立たせないのが肝心で、ぐらぐらやると昆布から粘りと磯臭さが出てくる。
沸く手前で昆布を引き上げ、削り節をひとつかみ入れる。
三十秒から一分、削り節が沈みはじめたら火を止めて漉す。
こしきが無ければ、キッチンペーパーを一枚かませたザルで十分だ。
ここでも煮出さない。
長く煮るほど濃くなると思われがちだけれど、実際に濃くなるのは渋みのほうだ。
味噌は、火を止めてから
出汁が取れたら具を入れて火を通し、味噌はいちばん最後に、火を止めてから溶く。
味噌を入れてから煮立てると、香りが飛んで塩気だけが残る。
外だと風で冷めるのが早いので、つい火を強くしたくなる。
そこを我慢して、器に注ぐ直前に溶くと、家で飲んでいる味噌汁の顔になる。
使い終わった昆布は捨てずに、細く刻んで汁の具にしてしまえばいい。
醤油をひとたらしして温かいご飯に載せるのも、キャンプの朝には悪くない。
荷物としての出汁
持っていくものは、昆布と削り節と、水を入れる容器だけだ。
昆布も削り節も乾いているから、常温で平気だし場所も取らない。
気を遣うのは水出ししたあとの一本だけ、と考えるとずいぶん気が楽になる。
この一本があるだけで、味噌汁も、うどんも、雑炊も、ぜんぶ味が変わる。
残った出汁は翌朝までは持たせない。
その日のうちに使い切る量だけ作る、というのが外での約束ごとだ。
調理まわりの道具はギアの一覧にまとめている。
出汁のために特別な道具は要らない。
水を入れる容器と、漉せるものが一つあればいい。