直売所のとうもろこしは、その日のうちに火を入れる。甘さは待ってくれない
朝に採ったものを昼に買って、夜に食べる。
この半日で、甘さはもう変わりはじめている。
夏の直売所で、僕がいちばん買うのはとうもろこしだ。
皮つきのまま山積みになっていて、朝いちばんに行くと、まだ切り口が濡れている。
あれを見ると、その日の夕飯はもう決まったようなものだと思う。
ただ、買って帰って、翌日の夜に食べたことが何度かある。
美味しくないわけではない。
でも、あの日の朝に感じた甘さとは別のものになっている。
甘さは、採ったところから落ちていく
畑を手伝っていた頃に教わったのは、とうもろこしは収穫した瞬間から糖が減っていく、という話だった。
実は採られたあとも生きていて、自分の持っている糖を使って呼吸を続けている。
だから置いておくほど甘さが抜ける。
そしてこの減り方は、温度が高いほど速い。
夏の車の中に半日置くというのは、いちばん減らしたい条件を自分で作っているようなものだ。
朝採りが尊ばれるのは気分の問題ではなくて、時間そのものが味に効いているからだと思う。
逆に言えば、冷やしておけば減り方は遅くなる。
その日のうちに食べられないなら、常温に置かず、まず冷やす。
それだけで翌日の味がだいぶ変わる。
直売所で僕が見ている三つ
ひとつ、ひげ。
茶色く濃くて、量が多いものを選ぶ。
ひげは一本一本が粒につながっているので、ひげが多いということは粒も詰まっている。
先のほうまで茶色くなっているのは、実が熟している合図だと教わった。
ふたつ、切り口。
根元の断面が白くてみずみずしいものは、採られてからの時間が短い。
茶色く乾いて縮んでいるものは、それなりに経っている。
皮の緑よりも、こっちのほうが正直だと思う。
みっつ、重さ。
同じくらいの大きさなら、持ち比べて重いほうを取る。
水分が残っていて、粒が詰まっている。
軽いものは、大きく見えても中がすかすかなことがある。
持って帰るまでが勝負になる
皮は剥かずにそのまま持ち帰る。
あれは実を乾かさないための包みなので、剥いてしまうと水分も甘さも早く抜ける。
直売所で剥いてもらえる場合でも、その日に食べないなら断って持ち帰る。
クーラーボックスがあれば入れる。
無ければ、袋の口を開けたまま日の当たらない足元へ置く。
締め切った袋に入れて助手席に放っておくのがいちばんまずい。
直売所は、その日の買い物の最後に寄るくらいでちょうどいい。
火の入れ方は、皮を剥かないほうが簡単
外で食べるなら、皮つきのまま火にかけるのが楽だ。
外側の汚れた皮を一枚二枚だけ落として、あとはそのまま焚き火の端に置く。
直火の真上ではなく、熾火の脇。
転がしながら十分から十五分、外の皮が黒く焦げてきたら中は蒸し上がっている。
皮の中に水分が残るので、自分の水で蒸される形になる。
剥いて直火に当てると、水分が飛んで硬くなりやすい。
焼き目と香ばしさが欲しいときは、蒸し上がってから皮を落として、最後に少しだけ炙ればいい。
茹でるなら、水から入れて、沸いてから三分ほど。
塩は茹でている湯にひとつまみか、上がってから振る。
仕事で野菜を扱っていた頃も、火を入れすぎないことだけは口うるさく言われた。
甘いものほど、余計なことをしないほうがいい。
食べきれなかったぶんは、生のまま置かずに火を入れてから冷やす。
翌朝、輪切りにしてスープに落とすと、これはこれで美味しい。
外で使う調理まわりの道具はギアの一覧にまとめてある。