夏の夜、一匹入るだけで眠れない。虫は追い出すより「入れない」ほうが早かった
刺されてから慌てるのをやめて、入る前に減らす順番に組み替えた。
効いたのは薬より、出入りのしかたと灯りの置き場所だった。
寝袋に入って十分ほどして、耳のすぐ横であの音がした。
起きて灯りをつけて、見つからなくて、消してまた横になる。それを三回やった夜がある。
刺された数より、あの往復のほうが体にこたえた。
それ以来、退治する道具を増やすより、入れない工夫のほうに時間を使っている。
虫はたいてい、人と一緒に入ってくる
テントや車の中に虫が入る場面を思い返すと、ほとんどが出入りの瞬間だった。
やりがちなのが、中の灯りをつけたまま入口を開けること。
暗い外から見れば、そこだけが光っている入口になる。
中を消して、外側を先に照らしてから開ける。これだけで入ってくる数がはっきり減った。
開ける幅と時間も効く。
全開にして荷物を運び込むより、必要な幅だけ開けて、身をかがめて素早く入る。
格好は悪いけれど、夜中に起こされるよりずっといい。
設営の場所も関係する。
水たまりや側溝の近く、背の高い草のきわは、蚊が湧いている確率が高い。
少し離れて、風の通るところを選ぶ。風があるだけで蚊は寄りにくくなる。
寄せない灯りにする
虫が集まるのは、明るさそのものより光の色のほうが大きい。
紫外線に近い、青白い光ほど寄ってくる。
だから手元の灯りは暖色に寄せる。
いま使っているランタンは色を切り替えられるので、夜は電球色に固定している。
虫が減るだけでなく、そのほうが目も休まる。
もうひとつ効くのが、明るい灯りを自分から離して置くこと。
少し離れたところに白い光をひとつ置いておくと、虫はそちらに集まる。
自分の周りは暗めにして、手元だけ暖色で照らす。この配置が、いまのところいちばん静かだ。
それでも来る相手には、手段を三つ持つ
肌につけるもの。
成分はイカリジンとディートの二つが主流で、性格が違う。
イカリジンは匂いが少なく、年齢による使用制限がない。衣類や樹脂を傷めにくいので、時計やサングラスを外さずに使える。
ディートは効く相手の範囲が広いぶん、子どもへの使用回数に制限がある製品が多い。
どちらも濃度で持続時間が変わるので、買うときは裏の表示を見てほしい。
身のまわりに置くもの。
電池で薬剤を飛ばすタイプは、足元やテーブルの下など、風の通らない低いところに置くと効く。
逆に、風のある開けた場所では薬剤が流れてしまって、ほとんど意味がない。
腰やザックに下げられるものなら、歩いているあいだも足まわりを守れる。
焚くもの。
昔ながらの渦巻きは、風上に置くのが基本。風下だと自分に煙が来るだけで、蚊のいる側には届かない。
ホルダーは、倒れにくいことと、熱いまま蓋を閉められることで選んでいる。
撤収のとき火の始末に手間取らないのは、思った以上に効いてくる。
刺されたあとにできること
かかない。これに尽きるのだけれど、寝ているあいだは無理だ。
だから刺された直後に冷やす。保冷剤でも、ペットボトルの水でもいい。
腫れが引くのが早いし、痕も残りにくい。
蜂やアブは、蚊とは別の話になる。
黒っぽい服と、甘い匂いのするものは避ける。
寄ってきたときに手で払うのがいちばん危ないので、姿勢を低くして静かに離れる。
虫よけの道具は、増やせば効くというものではなかった。
入れない、寄せない、その上で残った分にだけ手を打つ。
順番を変えただけで、夏の夜がずいぶん静かになった。
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