雨のあと、テントの表面で水が玉にならなくなった。破れる前に切れていたのは撥水だった

耐水圧の数字は買うときに見た。
そのあとで落ちていく数字のことは、誰も教えてくれなかった。

朝、雨があがったあとのテントをなでたら、手のひらが濡れた。
買ったころは、水が玉になって転がっていた面だ。
いまは玉にならずに、生地に染みこんで広がっている。

穴は開いていない。
なのに前の晩、内側の天井がうっすら湿っていた。
調べていくうちに、壊れていたのは生地ではないと分かってきた。

テントの防水は、二段構えになっている

テントの生地は、二つのしかけで雨を防いでいる。

ひとつは裏側のコーティング。
買うときに見る耐水圧という数字は、こちらのことだ。
1,500mmとか2,000mmとか書いてあるあれで、水を通さない膜そのものを指している。

もうひとつが表側の撥水。
生地の表面に薄くのっている加工で、水を玉にして転がすほうの役目をしている。

やっかいなのは、切れる順番だ。
裏のコーティングは、そう簡単には抜けない。
先に落ちるのはいつも表の撥水で、これは使うほど、洗うほど、こすれるほど減っていく。

撥水が切れても、水はすぐには通らない。
ただ、生地が水を吸って重くなる。
吸った生地は温度が下がるので、内側に水滴がつきやすくなる。
あの朝、天井が湿っていたのはたぶんそれだった。
雨漏りだと思って買い替える前に、ここを疑ってみてほしい。

切れているかどうかは、五秒で分かる

やり方は単純で、水をかけるだけ。
霧吹きでもコップの水でもいい。

玉になって転がれば、まだ生きている。
生地の色が濃くなって、そのまま染みになったら切れている。

試すと分かるのが、全面が一度に切れるわけではないこと。
先に落ちるのは決まって、こすれる場所だった。
畳むときの折り目、収納袋に押しこむときに当たる角、雨の日にリュックを置いた面。
うちのタープは、たたみ癖のついた線に沿って一本だけ染みができていた。

スプレーの前に、洗うほうが先だった

最初にやった失敗が、汚れた生地にそのまま吹いたことだ。
その日は玉になったのに、次の雨でもう戻っていた。

撥水剤は、汚れの上には乗らない。
砂ぼこり、焚き火の煙、手の脂。
このあたりが薄く積もっている面に吹いても、剤が生地ではなく汚れに付くだけだった。

いまは、この順番でやっている。

洗う。
中性の洗剤を薄めて、柔らかいスポンジで撫でるだけ。
ごしごしやると、残っている撥水まで削れる。
柔軟剤は入れない。
あれは繊維を寝かせて水を吸わせる方向に働くので、撥水とは逆のことをする。
虫の死骸のような固まった汚れは、先にふやかしてから落とすほうが生地を傷めない。

完全に乾かす。
半乾きのまま吹くと、むらになる。

20〜30cmほど離して、薄く均一に。
厚く吹けば効くというものではなくて、垂れたところだけ白く残る。
一度で決めようとせず、乾かしてもう一度のほうがきれいに乗った。

製品によって作法が違うので、裏の説明はいちおう読んだほうがいい。
乾いた生地に吹くものと、洗濯機で浸けこむものがあって、まったく別物だった。

スプレーは、素材と量で選ぶ

店で並んでいるものは、だいたい二種類に分かれる。

フッ素系は膜が薄く、生地の目をふさぎにくい。
テントやウェアのように、蒸れてほしくないものはこちらを選んでいる。

シリコン系は弾く力が強いかわりに、膜が厚くなりやすい。
傘やタープのように、通気を考えなくていいものには向いている。
透湿を売りにしているレインウェアに使うと、その売りを潰してしまうことがある。

もうひとつ、買う前に見てほしいのが量だ。
小さいボトルを買うと、テント一張りの途中で無くなる。
二人用のテントとタープで、420mlをほぼ一本使いきる感覚でいる。
足りなくなって半分だけ塗った面は、次の雨ではっきり差が出た。

吹くのは必ず外で。
細かい霧が舞うので、風下に立たないようにしている。

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いちばん効いたのは、結局のところ乾かすこと

スプレーを覚えてから分かったのは、塗る回数より、濡れたまま置かない習慣のほうが効くということだった。

撤収の日に雨だと、どうしても濡れたまま積んで帰ることになる。
そこまではしかたがない。
問題はそのあとで、袋に入れたまま一週間置いた年に、黒い点が出た。
こうなると撥水では戻らないし、匂いも抜けない。

いまは、帰った日に広げるところまでを撤収に含めている。
ベランダでも、部屋の中で椅子に掛けるだけでもいい。
雨に降られた回だけ、翌週に水をかけて玉になるか見る。
染みになっていたら、そこで一本吹いておく。

道具が長持ちするかどうかは、値段より手数で決まっている気がする。
それも大した手数ではなくて、広げて、乾かして、たまに水をかけてみるだけだった。

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