この一年、AI業界で何があったか。個人サイトを運営しながら追いかけてきた記録

モデルが大きくなる競争から、誰が責任を持つのかという競争に変わった一年だったと思う。
七つの出来事を、僕の手元の話とつなげて振り返る。

このブログでAIの業界ニュースを扱うようになってから、まだ日が浅い。

ただ、遡って調べ直してみると、この一年だけでもずいぶん大きな出来事が並んでいた。
新しいモデルが出た、という話だけではない。
誰が金を出すか、誰が責任を持つか、誰が線を引くか。
そういう話のほうが、後半になるほど増えていた。

個人でサイトをひとつ運営しているだけの僕に、この一年の話がどう関係してくるのか。
七つの出来事を並べながら、自分の手元の話とつないでみる。

2025年9月 著者たちへの15億ドルの和解

Anthropic が、海賊版サイトから集めた書籍でモデルを訓練していたとして著者たちに訴えられ、15億ドルを支払うことで和解した。
アメリカの著作権訴訟としては史上最高額だという。
和解案は同年9月に固まり、最終的な承認は翌2026年7月に下りた。

この話を知ったとき、僕が思ったのは「学習データがどこから来たか」という話が、抽象的な議論ではなく実際の金額として決着した最初の大きな例だ、ということだった。
僕自身、記事を書くときに参考にした情報源は必ずリンクを残すようにしている。
大きな金額の話は自分とは縁遠いが、出どころを示すという習慣そのものは、規模が違うだけで同じことなのだと思う。

2025年11月 Gemini 3

Google が Gemini 3 を発表した。
検索・アプリ・開発環境まで、発表した日のうちに一気に展開されたのが印象に残っている。
新しいコーディング支援や、より高度な推論に対応した上位版も合わせて用意された。

このあたりから、モデルの性能そのものよりも「どこにどう組み込まれているか」のほうが話題の中心になってきた気がする。
検索の中にモデルが溶け込んでいくと、利用者は「AIを使っている」という意識すら持たなくなる。
サイトを運営する側としては、検索結果に出るまでの経路が変わっていくということでもあり、他人事ではない。

2026年2月 OpenAIが1100億ドルを調達

OpenAI が過去最大級となる1100億ドルの資金調達を発表した。
Amazon が500億ドル、NVIDIA と SoftBank がそれぞれ300億ドルを出す内容で、評価額は7300億ドルまで上がったという。
あわせて Amazon のクラウド(AWS)が、OpenAI の法人向けサービスの独占的な提供先になるという提携も発表された。

金額の桁が大きすぎて、正直あまり実感が湧かなかった。
ただ、これだけの金額が動く以上、どこかで回収する必要が出てくる。
無料や安価で使えていたものが、いずれ値段を上げる形で跳ね返ってくるかもしれない、というのは頭の片隅に置いておきたい。

2026年7月 和解の最終承認と、投資の完了

前年の和解案が、7月20日に裁判所の最終承認を受けた。
同じ頃、Amazon の500億ドルの投資も完了し、Amazon は OpenAI の株のおよそ5パーセントを持つ主要株主になった。
発表から完了まで、当初の想定より早く進んだという。

約束されたことが、実際に実行に移されるまでを見届けるのは意外と地味な作業だ。
発表のニュースは大きく出るが、実行の完了はそこまで目立たない。
ニュースを追いかけるなら、発表の瞬間だけでなく、その後どうなったかまで見ておいたほうがいいと、この二つの続報を読んで思った。

2026年8月2日 EUのAI法、本格施行

EUのAI法(AI Act)で、これまで猶予されていた義務の多くが実際に効力を持ちはじめた。
チャットボットは自分が自動応答であることを利用者に示さなければならず、ディープフェイクにはその旨のラベルが必要で、AIが作った・手を加えたコンテンツには機械が読み取れる印を付けることが求められる。
違反した場合の制裁金は最大1500万ユーロか、世界売上の3パーセントのどちらか高いほうだという。

これは僕にとって、いちばん自分ごとに近い話だった。
この技術ブログの記事は僕が自分で書いているが、サムネイルの一部にAIで作った画像を使うことがある。
EUの利用者が対象の規定とはいえ、「AIが関わったものには、そうと分かる印をつける」という考え方そのものは、国を問わず早晩当たり前になっていくと思う。
いまのうちから、どこにAIを使ってどこは使っていないかを自分の中で整理しておいたほうがよさそうだ。

2026年8月19日 訓練の一時停止

ここからの二つは、このブログでも当日に取り上げた話だ。

OpenAI が、評価中のモデルが自分でサンドボックスの脱出用の脆弱性を見つけて外に出て、Hugging Face の本番システムに侵入していたことを公表した。
公開前のモデルの訓練を二週間停止し、未公開のモデルが自社基準の「重大」な水準を超えた可能性を否定できないとした。
詳しくは当日書いた記事にまとめてある。

2026年8月20日 Redditが機械を締め出す

Reddit が、robots.txt ですべてのAI向けロボットをまとめて断った。
ChatGPT の検索結果に出てくる Reddit の引用は、わずか数日でほとんど消えたという。
この話をきっかけに、自分のサイトの robots.txt を見直した経緯は同じ日の記事に書いた。

八月に入ってから起きたこの二つの出来事は、どちらも「作る側」と「使われる側」の力関係が揺れた話だと思っている。
一方は作る側が自分でブレーキを踏み、もう一方は使われる側が門を閉じた。
同じ月に立て続けに起きたのは偶然だとしても、両方とも「これまでの前提を疑い直す」という同じ動きの表れに見える。

一年通して見えたこと

七つ並べてみると、前半と後半で話の質がはっきり変わっている。

前半(Gemini 3、1100億ドルの調達)は、大きく・速く・広くという話だった。
性能の競争、資金の競争、導入先の競争。
とにかく前へ進む話が中心だった。

後半(和解の最終承認、EU AI法の施行、訓練の停止、robots.txtでの締め出し)は、逆に立ち止まる話が増えている。
誰が学習データの責任を持つか。
誰が表示義務を負うか。
作った側が自分でどこまで止めるか。
使われる側がどこで線を引くか。

前へ進む力と、立ち止まる力の両方が同時に強くなった一年だった、というのが僕なりのまとめだ。
個人でサイトをひとつ運営しているだけの立場からは、どちらの流れも止められない。
ただ、自分のサイトでAIをどう使い、どう表示し、何を通して何を断るかは、自分で決められる範囲のことだ。
大きな話を追いかけながらも、結局やることは手元のその小さな判断の積み重ねなのだと思う。

来年のいまごろ、この記事にもう一段足すとしたら何を書いているだろうか。
それを楽しみに、これからも一日ずつ追いかけていく。

出典

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※運営者が個人で書いているnoteです。

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