「このサイトをよく読みます」のボタンが配られはじめた。押してもらう側になるということ
グーグルが、読者に押してもらうためのボタンをサイト運営者に配りはじめた。
押されたサイトは、検索の上のほうやAIの答えの中で優先して出るようになる。
順位を取りにいく話ではなく、読者との関係をそのまま数に変える話だと思った。
八月二十日に出たグーグルの発表を読んでいて、手が止まった。
検索でどう出るかは、こちらからは触れない場所の話だとずっと思っていた。
そこに「読者が押すボタン」が入ってきた。
しかも、貼るのは僕らのほうだという。
何があったのか
グーグルが、サイト運営者が自分のページに貼れるボタンを公開した。
名前は「Preferred Sources」、日本語だと優先する情報源という言い方になる。
読者がそのボタンを押すと、そのサイトが「この人が優先して読みたい情報源」としてグーグル側に登録される。
押したあとは、読んでいたページのその場所へ戻る。
発表は八月二十日、グーグルの検索エコシステム部門のゼネラルマネージャーであるMrinalini Loew氏の名前で出ている。
登録されると何が変わるのか。
そのサイトの記事が、検索のトップニュースの枠、AIによる概要、AIモードの中で出やすくなる。
出たときには「優先」の印がつく。
グーグルの発表文によれば、すでに六十万を超える情報源が誰かに選ばれているそうだ。
貼り方そのものは驚くほど短い。
ヘッダに読み込みの一行を足して、出したい場所に空の箱を一つ置く。
それで終わりだ。
箱のほうに data-theme を書けば明るい見た目と暗い見た目を選べるし、data-lang で表示の言語も指定できる。
ひとつだけ条件があって、対象になるのはドメイン単位かサブドメイン単位のサイトだけ。
example.com のような住所なら使えるが、example.com/blog のようにフォルダの下で運営しているブログは対象にならない。
僕がひっかかったところ
ひっかかったのは、押すのが読者だという一点だった。
検索での見え方は、こちらが何をしても最後は向こうが決める話だった。
それが今回は、読者が自分の意思で「この人のを読みたい」と言えるようになっている。
作る側からすると、ずいぶん近いところまで来たな、という感じがする。
ただ、裏から見ると別の景色になる。
押してくれる読者をすでに持っている人が、強くなる仕組みでもある。
毎日読まれている媒体には押す人がいて、これから始める人のページには押す人がいない。
差がついている場所の差を、そのまま検索の側へ持ち込むことになる。
新しい入り口が増えたというより、既にある関係が可視化された、と言ったほうが近い。
ドメイン単位という条件も、あとから効いてくる決まりだと思った。
うちは本体を autocamp.website に置いて、コラムだけ別の名前を切って動かしている。
たまたま条件に合っていたけれど、もし全部をフォルダの下にまとめていたら、今回の話には乗れなかった。
置き場所の決め方は、決めた日には損得が見えない。
何年か経ってから、こういう形で返ってくる。
それと、貼るということは自分のページに他社の script を一つ増やすということでもある。
読み込みは非同期なので表示を止めはしないが、読者がどのページで押したかは向こうに渡る。
便利さと引き換えに何を渡すのか、二行だからこそ軽く考えてしまいそうになる。
数字についても、正直に分けて書いておきたい。
「優先する情報源にしていると二倍クリックされやすい」という数え方を報じている記事があるが、僕が読んだ限り、グーグル自身の発表文にその数字は載っていない。
六十万という情報源の数はグーグルが書いている。
二倍のほうは報道側の説明として受け取っておくのが正確だと思う。
で、僕はどうするか
すぐには貼らない。
理由は単純で、いまのうちのサイトで押してくれる人がどれだけいるかを、僕はまだ知らないからだ。
ボタンを置いて誰にも押されない画面を見るくらいなら、押したくなる記事を先に増やしたい。
貼るとしたら、場所は記事の終わりにする。
読み終わって、悪くなかったと思ってもらえたところに一つだけ。
ヘッダに置いて毎回目に入れるのは、読む前にお願いをしているようで気が引ける。
そのうえで、これは検索のための作業ではないと思っている。
押してもらえるかどうかは、結局また読みたいと思われているかどうかでしかない。
ボタンはそれを数に変えるだけの装置だ。
数に変わるようになったぶん、ごまかしが効かなくなったとも言える。
そう考えると、いま書いているものの中身を良くする以外に、やることは特にない。
出典
※運営者が個人で書いているnoteです。