同じことを何度も説明していた。AIに読ませておく1枚を作った話
「今日はこのルールで」と、セッションのたびに僕は同じ説明を書いていた。
それを1枚のファイルに移したら、説明する時間がまるごと消えた。
新しいAIとのセッションを開くたび、僕は同じ前置きを書いていた。「ファイル名は日本語で」「CSSは直接いじらずSCSSから作る」「本番へ流す前に必ず確認して」。3行くらいならまだいいが、案件が増えるたびにその前置きは長くなっていって、ある日タイピングだけで5分溶かしていることに気づいた。
何が起きていたか
困っていたのは説明の手間そのものより、説明を忘れることだった。急いでいるときほど前置きを省略し、省略したときに限って、前と同じミスをAIがもう一度やる。僕が半年前に指摘したはずの間違いを、今日また指摘している。それに気づいたとき、直しているのは目の前のコードじゃなくて、毎回リセットされる自分の記憶の方だと分かった。
常時読ませる1枚を作った
やったことは単純で、プロジェクトの入り口に置く設定ファイルを1枚作り、セッションが始まるたびに必ず読み込まれるようにしただけだ。書いたのはルールというより、過去に直されたことの記録に近い。「なぜCSSを直接編集してはいけないか」「なぜ本番へ流す前に一呼吸置くか」を、理由つきで書いておく。禁止事項の羅列だと守られにくいが、一度失敗した理由が書いてあると、AIも人と同じで納得して動いてくれる印象がある。
実際に効いたこと
効果はタイピングが減ったことより先に、同じ失敗の再発が減ったことで実感した。以前は月に何度か「あ、それ前も言ったやつだ」という指摘をしていたのが、ファイルに書いた項目については、ほぼ出なくなった。もうひとつ効いたのは、自分の頭の中にしかなかった判断基準が言語化されたことだ。「なんとなくこうしている」を文章にすると、自分でもルールの矛盾に気づけたりする。
ただし、書けば書くほど良いわけでもない。あるとき欲張って細かい注意点を詰め込みすぎたら、かえって重要な部分が埋もれて、参照されにくくなった。いまは「何度も直したこと」だけを残し、一度きりの細かい話はその都度伝える方に戻している。1枚のファイルは、思い出せない自分の代わりに覚えておいてもらう場所であって、マニュアル全部を詰め込む場所ではない、というのが今のところの結論だ。